運命の出会い
二人は海の上を滑るように進み、かなり沖まで出ていく。そこには隣の葉山マリーナから出ている二人乗りの小型ヨットが、海上をたくさん走っているのが見える。この海ではいくつかの大学のヨット部も練習をしている。
千佳も大学に入った時、そのマリーナを使っているヨット部に入部しようと考えていたが、今はウインドサーフィンにすっかりはまっている。二人は二時間ほど沖でスラロームを楽しみ、海岸に戻ってくる。
圭が褒める。
「かなり上達したな」
千佳はそれを聞いてとても嬉しそうだ。
「そうでしょう。今度は圭がよくやっている、セールに思い切り風を受け、ボードをフワッと浮かせるテクニックを教えてよ」
その日、二人は海の上で一日中遊ぶ。時間はもう午後三時を過ぎており、砂浜にある海の家は店を閉め、海水浴客は数が少なくなっている。この時間になると、家族連れや犬の散歩の人達が浜辺を歩いている。
二人はキャリアーに道具を載せ、国道の下を抜ける狭い道に向かう。その日も河口付近の砂浜では、横須賀の米兵達がビーチバレーやフリスビーで楽しそうに遊んでいる。千佳はキャリアーを引っ張りながら、その米兵達を見て声をかける。
「圭、この前、あの怪しくて嫌な女がここにいて……」
圭がすぐに注意する。
「よそ見をしていると人にぶつかるぞ。前をよく見て、自分のキャリアーをしっかりと引いて!」
千佳はあわててまた前を向き、追いかけていった。
二人が道具一式を店に預け、シャワーを浴びた後、圭は愛車の大型バイクにジーパン姿でまたがる。そこに千佳がやってきて、ジーパンのポケットに何かを入れる。それを取り出して、圭が言う。
「これはUSBメモリじゃないか。こんなもの、俺にどうして欲しいんだ?」