まずはインフォメーションで地図をもらって市内へのアクセスを聞こうとしたが、そのインフォメーションが見つからない。空港の職員に聞こうと思っても私の英語では通じない。困ったなと思ったが、航空券を買ったとき、市内へのアクセスは列車で1時間と読んだ気がしたので、まずは駅を探すことにした。

駅は空港を出て少し歩いた左側にあるという。真夏の太陽が照り付ける中、荷物を引いて駅へ向かった。チケットを買おうとしてまだ両替をしていないことに気が付いた。また戻るのかと思って振り向くと、そこに日本人らしき人がいた。

「日本の方ですか」

「そうです。日本人ですよ」

なんとも頼もしい声。

「チケット、カードで買えますかね」

とさらに聞くと、

「試してみましょう」

と、先に買ってみてくれた。

列車の中で話をした。私は観光でモスクワとサンクトペテルブルグに一人で行くこと。地図やガイドブックは持たず、ネットで調べたり、ホテルの人に聞いたりして行く場所を決めること。お金を両替し忘れたことなど。

その人はロシアの研究機関との共同研究でたびたびモスクワに来ていると言った。私の何も準備していない様子を非常に心配してくださり、一人でホテルまでたどり着けるのかと危惧してくれた。

しかし地下鉄も同じ路線だったので、私にとっては大助かり。偶然帰る日も同じということで、また会えるといいですねと別れた。

ホテルはビルの裏側だったから見つけにくかったが、赤の広場までショッピングモールを抜けてすぐという絶好のロケーションだった。それにしてもホテルの紹介に表側のビルの写真を使うのはやめてほしい、それでは見つけることはできない。

ホテルで市内地図をもらおうとしたら、本屋に売っているから買って、と言われたときはこれがロシアかと驚くような、納得するような。