第一章 再起
タクシー運転手は同乗者が外国人だと認識すると軍事基地近くでは身を屈めて外から見えないようにまた写真は絶対取らないように注意した。大連には軍事施設が多く、運転手に一々指摘されながらの観光となった。
開発区での昼食は中国の可能性と未来を感じ取ることができた。その後、大連中心街にあるスイス銀行大連支店の隣にある大丸百貨店に送迎され、タクシーをリリースした。
丽萍(リーピン)はポケットから百元札を一枚渡し、運転手からの領収書を仁に渡した。
一日貸切りタクシーが百元とは恐れ入ったが、観光の最後が日系百貨店となっていたことも、中国人の逞しさに敬服させられた。一通りの買い物の後、夕刻の中山公園(*)のオープンスペースでロシア人によるファッションショーが行われており、二人で観賞した。
その頃には、丽萍の素朴さの虜となっていた。
ファッションショーが終わって二人で、「風倶楽部」に向かった。クラブで簡単に点心料理の夕食を取り、一時間程のんびりと会話した後、一人、徒歩でホテルに帰った。大連の印象は、自然の多さと人々の日本人に対する友好的な態度、そして、先進的な開発区でのシステム開発会社が多いということだった。
その点を大いに気に入り、中国での開発拠点として、大連を最良の候補として考えていることに気が付いた。そして、その要因の一つが、丽萍であることも十分に意識していた。