ラ・エンカにとって、その光景は幼き頃見た、故郷の城がカーに襲われた時の情景と重なり、ラ・エンカは見過ごす事が出来なかった。

部下にウミガメを寄せるよう指示し、牢獄内の老婆に格子から離れるように叫んだ。直ぐに牢獄近くのカーを炎で追い払い、背中の剣で鉄格子を切ると、老婆とその御付きらしき女性二人を助け出した。そして隣りの牢獄の鉄格子も剣で切った。

囚われていた人達は、檻から出てウミガメに乗る者と自ら出口を目指す者がいた。 助けられた老婆は、ラ・エンカに向かって言った。

「腹の奥底に主の記憶が入った種がある。それを抜き破壊すればワニは自分を取り戻す」

ラ・エンカが穴の奥へ引き返す事を躊躇していると老婆は続けた。

「皆助かる信じろ!」

ラ・エンカはまるでマジナイにでもかかったかのように老婆に言われるままに奥へ向かうようカメの操縦士に指示した。奥へ引き返すと彼女が指さした床をラ・エンカは剣でつつくとラグビーボール程の大きさの種が刺さる。老婆はラ・エンカにその種を切るように指示した。

ラ・エンカは、言われた通り剣で切った。種が真っ二つに割れると、しばらくしてワニは自分の意志で体を動かす事が出来るようになったのか動きを止める。

ラ・エンカはウミガメを口の開閉部へ向かわせた。しかし、そこでは、野生のカーと地の国のカーが絡み合い揉みくちゃになっていた。だが時間が経つにつれて徐々に地の国のカーに異変が起き始める。

体が溶け始め燃えやがて跡形もなく消えていき、地の国のカーの数が少しずつ減っていく。そんな中、野生のカーが更に体内へと侵入して来るので外に一体どれだけの野生のカーがいるのかラ・エンカは不安になった。イムフラは、溶けていくカーを見ながら心の中で呟く。

(やはりプラーナが足りないか……。もう全て放つか)

プラントの苗木に笛で指示を出す事を決心する。

【前回の記事を読む】轟音が響き、部屋の外に煙が…。煙が晴れてきて、気づくと機関銃が向けられていた