おじいちゃん自身、「ありがたい」他人の忠告をよく聞かず、時として自分の考えに従って行動して反感を買い、異動させられることもあった。確かに失ったことも多いかもしれない。
しかし、長い目でみれば、自らの頭でじっくりと考え、自ら進む道を決断し、それに従って行動したとき、結果はどうあれ、それを真正面から受け入れることで人間として得ることのほうが大きかった、というのがおじいちゃんの強い思いだ。人生を他人の無責任な判断に委ねたくなかったのだ。
65歳を過ぎたおじいちゃんのこれまでの人生は平凡だったかもしれない。
しかし、いろいろな成功と失敗を繰り返しながら今日まで生きてくることができた。このなかには、自ら決断することで経験できた自分に対する気づき、自分の信念を貫き通すほんものの研究者との出会いによる感化もあった。
また、技術開発のなかで、点と点を結ぶ力であるセレンディピティも経験し、製品開発における絶体絶命のピンチを切り抜けるというとても貴重な体験もできた。
そして、2020年9月に会社を退職したのちも、自分の会社を新たに立ち上げ、君たちの世代に、もっと技術的な財産を残したいと、新しい仲間たちと日々奮闘している。体力がある限りできるだけ続けるつもりだ。