第1章 山本果音
八.一緒に行こう
「ハア……、ハア……」
果音の息が、少しずつ荒くなる。
「果音ちゃん大丈夫?」
「ハア……、ハア……」
果音の顔が急にクシャクシャになる。肩が震え、大粒の涙が流れる。
そして次の瞬間、果音が叫び声を上げた。
「もう、無理だよ~」
それは驚くほど大きな声だった。
「苦しんだよ~、居場所がないよ~、みんな嫌いだよ~」
「ハア……、ハア……」
どれくらい時間が経ったのだろう。果音は涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら叫び続けた。
「嫌だ! 嫌だ! 学校も家も全部嫌だ!」
「どこも、地獄だよ!」
「どうして私が、死なないといけないの?」
「みんなが、いなくなれ!」
「お父さん~」
「お父さん~」
(そう、もっと叫びな。吐き出しな)心の中でバーバラも叫んだ。
バーバラはただ黙って、果音の傍に居た。
ひとしきり泣き叫んだ果音は、最後に一言「私、本当は家族にも、友達にも、認められたい」と呟やいた。