トリブバン国際空港へ着陸した。私たちにとって初めてのアジア旅が始まる。気になる天候は、飛行機の窓から見る限り、とてもよい感じだ。二人の旅の始まりはいつも晴れると喜び合いながら、レンガ造りの空港へ向かった。

随所に立っている浅黒い肌の係員たちを見て、ネパールへ降り立ったことを実感する。入口と出口の看板は、紙に英語とネパール語でペン書きされているだけの殺風景な空港だ。とても国際空港とは思えない。中に入ると改築中で、あちこちで工事が行われていた。途中トイレに立ち寄るが、セメントの床が水浸し。ここで入るのは諦めて、すぐに入国審査へと向かう。

すると、日本語をやたらと使いたがる面白いおじさん二人が担当。しかも、友人の出入国カードを切り忘れるといういい加減さだ。人懐っこい友人は「ちょっと、しっかりしなさいよ」と言わんばかりにおじさんの頭を軽くたたき、四人で笑い転げた。全く迷う余地のない小さな空港のこんな出会いから、私たちのネパール旅は始まった。

入国審査を終えて出口へ向かうと、そこにはすでに旅行客を出迎える人たちが大勢集まっていた。自分たちの泊まるホテルのウエルカム・プレートを探す。しかし、目を懲らして見れども、なかなか見つからない。しばらくの間キョロキョロしていると、ついに友人が発見した。

他のプレートが高々と掲げられる中、私たちの泊まるホテルのプレートは、やけに低い位置に下ろされているではないか。待ちくたびれて疲れたのだろうか。歩み寄って名前を告げると、にっこり笑って「ついてきて」というしぐさをした。ほっとした私たちは、案内されるがまま空港を出た。

一二月下旬なのに、うららかな春のような日差し。やはり奄美大島と同じ緯度なのだ。しかし、のどかな気分はそこまでだった。 

【前回の記事を読む】私たちの旅先が、なぜネパールになったのか。それは、一本の映画から始まる…