なんでもたべるかいじゅう
昔々、地球が生まれるよりも、もっと昔の話。
広い宇宙の片隅に、ペントンという、小さな星がありました。
ペントンでは、色々な生きもの達が集まり、村を作って暮らしていました。
いつも皆、好きな歌をうたい踊り、木や草花は露と一緒にきらきら輝き、豊かな水が、どこにでも、どこまでも、穏やかに流れていました。それぞれが好きな仕事をして、助け合いながら、水や風、空と大地と共に生きていたのです。
村から離れた山の中に、ブギーという巨大なかいじゅうが住んでいました。ブギーは、この星で一番大きな生きものでした。
空まで届く長い首、堅く尖ったツノや鋭い背びれ、逞しい四本足、金剛石のように硬い鱗、そして体よりも長く太い尻尾。
それは、大らかで優しい心の持ち主のものとは思えないような、激しい体でした。朝になると、ブギーは山から村へ行って、皆のお仕事を手伝いました。
ブギーが村へやってくると、生きもの達は皆、声を掛けます。
「ブギー! そこの雲を少しどけてくれないかい」
「ほいきた! 畑にお日さまを当てるね」
「ブギー、あそこのお山に穴を掘ってもらえませんか」
「トンネルだね、任せて。この尻尾で一突きさ」
「ブギー、算数を教えて」
「それはぼくにはちょっと。ごめんね。数字が好きな子を探してくるよ」
ブギーは、お手伝いが好きでした。そして何よりも、村の生きもの達が愛しくて仕方がありませんでした。
村には、エイミーという、小さな友達がいました。ブギーが山からやってくると、エイミーはいつも「一緒に遊ぼう」と、大きなカゴを背負って、走ってきました。エイミーは、ブギーの鼻の穴に入って、かくれんぼをするのが好きでした。ブギーがくしゃみをすると、「ひゃあああ」とエイミーは宙を飛びました。
エイミーが地面に落っこちないように、ブギーは大きな尻尾で優しく受け止めます。それが楽しいので、エイミーは、何度もブギーの鼻の穴に入りました。
ブギーは、自分になついてくれるエイミーが大好きでした。
二匹は大の仲良しで、エイミーのお父さんとお母さんは、ブギーを信頼していました。仕事の間、自分達の娘を安心して預けていました。ブギーは、村の人気者でした。