なんでもたべるかいじゅう
ブギーが、村のお仕事を手伝っているところを見ると、嫌な気持ちになりました。
自分の兄が、自分達より小さなか弱いもの達の手伝いをしていることが、優しさを売り歩きご機嫌取りをしているように思えて、ムンゴは不愉快になるのでした。
何よりも、ブギーの方が、皆に好かれていることが気に入りませんでした。
ブギーは毎日、村の皆がくれるたべものを、ムンゴに分け与えていました。
ムンゴは、お礼も言わず、当たり前のようにそれをたべるのでした。
まだこの二匹が若かった頃、今から何百年も前に、大好物の木の実の取り合いがきっかけでこの兄弟は大げんかをしました。その時のけんかではブギーが勝ったので、ムンゴは、それから一度もブギーに歯向かうことなく生きてきました。
自分より兄の方が強く、そのうえ皆から人気があるので、そのことをとても妬んでいました。兄のように村の仕事を手伝うなんて、気持ちが悪くてやりたくなかったのです。でも本当は、寂しいだけでした。
ブギーにとっては、弟がお腹いっぱいご飯をたべられることが、喜びでした。
けんかのことはとうに忘れて、弟を心から可愛がっていました。
村の真ん中に一本、年老いた木が立っていました。その木には、一年に一度、一粒だけ、この星で一番大きい真っ赤な実がなるのでした。村の生きもの達は赤い木の実をたべませんでしたが、ブギーとムンゴの二匹にとっては、年に一度のご馳走でした。
二匹は毎年、木の実を必ず半分こにしてたべていました。この年も、血のように赤い丸々とした立派な木の実がなりました。ある日の朝、年老いた木は、木の実を揺らしながら、エイミーに声を掛けました。
「おはよう。お嬢さん。どこかに、この実をブギーとムンゴに届けてくれる者はおらんかのう。皆、仕事で忙しいようじゃから」
「おはよう。おじいさん。それなら、私が喜んで届けるわ」
「これはこれは。しかし、お嬢さんには少し大きな荷物だなあ」
「大丈夫。私、力持ちなの! ブギーに会うためなら、幾らでも力が出るわ。それに、このリボンを髪に巻くと何倍も強くなれるの!」
そういうと、年老いた木は穏やかに微笑みました。
「ありがとう。今頃、二匹とも待っているじゃろうから。それでは、よろしく伝えてくだされ」
「任せて。もうすぐ夕ご飯だし、きっと喜んでくれるはず」
「本当にありがとう。どうか、お気を付けて」