第二章「天の神様と土の神様」  ゆう

「あ、高校のときに、石垣島の平久保崎灯台で、由紀さんに会ったんだ。星のきれいな夜に、サングラスをかけていたから、不思議だなと思って。それで、よく覚えていたんだ。それと、きれいな人だなあって思った。でも、まさかまた会えるなんて、思ってもみなかった」

「誉さん、何で今まで言ってくれなかったの?」

「ごめん、ごめん。急にそんな話をしたら、ストーカーって言われるんじゃないかと思って」

確かに一瞬、ほんの一瞬よ。そう思ったことは認めるけど、誉さんも、人が悪い。

高校のとき、祖父が亡くなった。私の両親は、二人とも石垣島出身だ。沖縄本島に移り住んだ理由はただ一つ──私だ。

先天性心疾患で生まれた私を、さらなる悲劇が待っていた。先天性緑内障も持っていたことが分かったのだ。両親は医師から、沖縄本島にある小児科病院を紹介された。そこでは、先進的な医療が受けられるということだった。そして、私と両親は、石垣島を離れ、沖縄本島に移り住むこととなった。

おじいちゃんが亡くなったのは、二年前。私たち家族は、お葬式のために三日の間、石垣島に行っていた。

そのときに、お母さんが

「星を見に行こうよ」

と言って平久保灯台まで行ったのだ。

「おじいちゃんは、星を見るのが好きだった」

そのときのお母さんの声は、少し震えていた。

あのとき、近くに誉さんが居たなんて。「星の巡り合わせ」とは、こういうときに使えばよかったかな?

「あの日の夜は、お母さんが『星を見に行こう』って。私のお母さん、少し変わり者で。いろいろな病気を持って生まれてきた私なのに、お母さんは、『ラッキーだった』って言うんです。『難しい病気の名前も覚えることができたし、医療器具の使い方や点字だって学ぶことができた』って、可笑しいですよね?」

「そんなことないよ。とっても素敵なお母さんだね。俺の母さんなんて、早く一人前になって、家にお金を入れなさい。なんて、そればっか。一度でいいから、由紀さんのお母さんと俺の母さん、変わってほしいよ」

「いいの? 昭和のアイドルの曲を熱唱しちゃうよ」

「何それ?」

「とにかく明るいの、私の母。自称、我が家のアイドルだから」

「ますます、会いたくなるね。どんな曲を歌うの?」

と、誉さんが興味を持ってしまったので、私はしかたなく曲名を教えた。すると、誉さんは、携帯電話で検索してくれた。そして、

「ちょっと、耳いい? イヤホン」

と、イヤホンの片方を渡してくれた。 私は左耳にイヤホンを付け、誉さんは右耳に付けた。触れ合う肌で感じ取ることができた。今、イヤホンの線が繋いでいるのは、私と誉さんの耳だけではなく、心まで繋いでくれている気がして、鼓動が高鳴る。

昭和のアイドルが「あなたの幸せは、あなたのすぐ傍にあるのよ」と、歌っている。今の状況を応援されているようで、少し恥ずかしい気持ちになる。でも……やっぱり、本物の声とお母さんの歌声は雲泥の差だ。