「……あー、あんま無理すんなよ。その、一応病人扱いなんだからさ」

クルリと彼女に向き直り、決め顔でそう言った。

何気ない決め台詞に、内心「やば、決まった……!」とかテンションが上がったが、言われた当の本人は何故か表情が固まり、「……あ」と小さく言葉を漏らす。

その表情に不穏な空気を感じずにはいられなかったが、考えるよりも早く結果を産んだ。

瞬間、予兆もなしに自ら開け、そして手を離したことにより障害がなくなった病室の扉が、右肩にぶつかった。

「あ? ……いっ!? たぁ!!」

それは特に痛みはなかったが、やたらと羞恥的だった。

何せ、さっきまで決め台詞を吐いたばかりなのだから。しかも残念なことに、これで終わりではなく扉にぶつかった反動で「っとっと……!」と片足で半歩バランスをとる矢先、ガン!と物音を響かせ、頭から盛大に壁面にぶつかった。

「はっははは!! バカだね、レッカ君! 自分で開けたドアに自らぶつかるとかっ‼ え? 何? 私が元気ないから励まそうとしたの!?」

それの一部始終を見ていたルナ姉が盛大に吹き出し、悶絶するように口元を押さえる。

それと比べ、当然のように「いっっつー……!!」とたまらず後頭部を押さえ身をよじらせる俺。

こんなに痛がっているのに家(うち)のお姉様は腹を抱えて爆笑している。

その姿に怒りが込み上げてきて、その場が病院ということも忘れる程の大きな声で怒る。

「ちゃうわ、ボケェ!! おまっ、どんだけ笑ってんだ!!」

それから耐えきれなくなった俺は、顔を赤くしたまま「じゃあな!」と強く言い放ち、ここを出た。

今日も俺の不器用スキルは順調だった。

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