衆院ソル。

自称、「院さん」と名乗る大学生と別れ、再びルナ姉に会いに行く。

ホントはもう用なんて無く、昨日の事件を除いて話したい話題も無かった訳だが「外の空気を吸ってくる」と言ったきり、ルナ姉に挨拶も無しに帰るのは気が引ける。

先程と全く同じルートを通り、すぐにルナ姉の病室に着く。

一度通ったルートなので迷わず速やかに目的地に辿り着くことが出来た。

俺はドジだが、方向音痴じゃない。

「コンコン」とノックし、いつも通り彼女の返事も待たずに勝手に扉を開き、部屋に入る。

「ルナ姉」

「あ、レッカ君。どうだった? 一日ぶりの外の空気は」

先程よりだいぶ落ち着いた様子の彼女は、変わらず椅子に座っていた。

「あ、ああ。普通の空気だったよ。俺の良く知ってる久禮市の空気だった」

ルナ姉に放った台詞通り、実際に外に出て空気を吸った訳では……、いや、空気は吸ったが、それ自体に意識なんて出来たものじゃなかった為、話を合わせる。

「そっか」

「じゃあ、俺、そろそろ家のことも心配だから、帰るわ」

「うん、分かった」

「また明日も来るから。この部屋でいいんだよな」

「うん。学校にもちゃんと行くんだよ」

「わーってる、不登校にはならねーよ。じゃあ、また明日」

「うん。またね」

この病室に入って、たった数秒のやりとり。

軽く言葉を交わし彼女に背を向け、病室の扉を開けた瞬間、どうにも節操のない自分にもどかしさを感じた。