見方を変えると、日本の会社における暗黙の了解事項とか社内の慣習などは、経験から学んだ、社員間の軋轢を避けものごとをスムースに運ぶための知恵かもしれません。しかしその知恵は、言うべきことは言う、すべきことはする、といったことが基本の外資系では、なかなか通用しないことも多いのです。
一方、社員数が数十人といった規模が小さい外資系で、同業の日本の会社から転職してきた人たちがマネジメントに多くいる場合には、後に述べるように、必ずしも前記のような人たちをよく見かけるということではありません。
外資系では、日本の会社の人たちと発想の原点が異なる人も見かけます。固定観念にとらわれない発想をする人です。彼らは、誰もが思いつかなかったあっと驚くようなポイントを指摘したり、誰も気がつかなかった観点からものごとを分析して、他の人と異なる結論を導いたりします。こういった人たちは、「外見は日本人だが頭のなかはガイジン」などと社内で呼ばれています。
こうしてみると、多くの日本人は、自分は気がつかないけれども、先入観や固定観念にとらわれているのです。そして同じ固定観念で発想する人のグループに入っている方が、異分子が多数いるグループに属しているより、よい悪いは別にして居心地がよいことは確かでしょう。しかし、外資系ではそういった人たちが評価されるのは難しいのです。
例えば、新商品の販売計画を策定する場合、日本人から見ると、ともすると計画を実行に移した後の結果が見えてしまうことがあります。
正確には見えてしまうのではなく、自分の過去の経験から本人がそう思っているだけですが。そして、「そんなことをしても」とか「やってもムダだ」といった見方をしたり、なかにはそれを口に出して主張したりする人も出てきます。
しかし、ここでよく考えなければならないのは、過去に失敗したことや計画どおりにいかなかったことが今度も同じような結果になるかどうか、ビジネスの環境はつねに変化しているので、本当は必ずしも確かではないことです。
ところが私たち日本人には、過去の経験からどうしてもそうなると思ってしまう傾向があります。同じ社会(コミュニティ)で同じような経験をした者同士が集まると、結論はだいたい同じようになるのです。