最後の最後、終に土壇場で神技が出現したのである。ウッズのガッツポーズも最高潮に達した。このチップインイーグルで、アメリカはプレーオフ進出を果たしたのである。
では、この一打が何故神技なのか。
普通チッブインイーグルなど、プロの競技ではそれほど珍しいことではない。テレビでもよく見る光景である。
しかし、この場合、最終日の最終ホールの最終ショットで、かなり遠くのラフからイーグルという離れ業を演じ、然もこれによって優勝戦線に参戦できるという、そのことに神技の価値を見い出すのである。これを3番のロングホールでやっても意味がなく、こういう最終舞台でやってこそ神技とか奇跡とかと言えるのである。
結局、本大会は、南アフリカ、デンマーク、ニュージーランド、アメリカの四カ国の間で、プレーオフ(Sudden death突然死と言われ、各ホールごとで決着をつけていく)が行われたが、最終的に2ホール目を制したアーニー・エルス、レティーフ・グーセンの南アフリカ組が、五年振り通算四度目の優勝を果たしたのである。
人は言う。あそこまで来たのだから、アメリカに三連覇させてやりたかった。
だが、プレーオフ1ホール目の十八番、第1打を左の林の中に入れたタイガー・ウッズは、その繁みの中で元の人間に立ち還ったのである。彼は既に最終ホールの十八番で、完全に燃え尽きてしまったのだ。そしてその林の中で、アメリカチームの三連覇は潰え去ったのである。
二人は誰もが知る世界屈指の名プレーヤーだが、今回優勝を逸したことを決して後悔していない筈である。多分、自分達は最終ホールで優勝したのだと思っているに違いない。
翌二〇〇二年十二月、伊澤、丸山の両コンビは、再度本大会に挑戦し、見事前年の雪辱を果たして、四十五年振りに栄光のワールドカップ優勝を日本に持ち帰ったのである。
参考文献
読売新聞報知新聞 『日本大百科全書』小学館 一九八八年五月