「ウェアリング家」は、たくさんの牛を飼っていた。牧場の中に大きな家が一軒あるといった感じだった。子どもは二人いて、一人は長男で、大学に行きながら父親の手伝いをしていた。もう一人は次男で小学生。「ワシントン・ホワイトスクール」に通う四年生。なかなかのやんちゃ坊主だった。
そして、もう一人、南米ウルグアイからの留学生がいた。「フーリエ」と言う女子高校生だった。また、家の中には放し飼いの、熊のような大きな犬が二匹いた。牧場にはよくいそうなでかい犬だった。
家の陽当たりの良いところでいつも寝そべっていた。
ミセス・ウェアリングは、
「ケンジ、ここではみんな自由にやってちょうだい。」
「自己責任だから。」と言ってくれた。
「それから、私たちのことは、ミスターやミセスは付けないで、下の名前で呼んでちょうだい。」と言われた。
早速「わかったよ、メリアン。」と返すと、
「グッド。」と言って、微笑みを返してくれた。
夫のジョンは、朝早くから牧場に行き、着ていた服を泥まみれにして夕刻に帰る。妻のメリアンにキスをし、子どもたちに言葉少なに声をかけると、すぐにシャワーを浴び、夕食をとる。
夕食の席では、その日一日の出来事をみんなで話す。
「今日はどうだった?」
「何かあったのか?」
「友だちとはその後どんな具合だ?」
と、一人ひとりに訊くのだ。一言二言で答えようものなら、
「もっと言え。」
という無言の圧力を感じるくらいだ。二人とも仕事で疲れているにもかかわらず、家のことを二の次にしないという気持ちがよく伝わってきた。そこで、みんなお互いに悩んでいることや、頼みたいことを訊くことができた。