吹奏楽部
中学のブレザーの制服を受け取ってきた日、晩ご飯が終わってから、
「制服を着てみろ」
と昭二兄ちゃんに言われ、写真を撮ることになった。千恵姉ちゃんがデジカメを出して、僕一人の写真を撮ってから、タイマーを使ってみんなの写真を撮った。
制服を脱いでたらお姉ちゃんに呼ばれた。お姉ちゃんはポンカンを剝いて、お兄ちゃんと並んで座っていた。僕と由美に座るように言って、お姉ちゃんが
「ヒロ君、小学校でいじめられたことはなかった?」
じっと僕の目を見た。いきなりだからポンカンを咥えたまま止まってしまった。
「ないけど……どうして?」
「花井先生が担任でよかったよねー」
お姉ちゃんが続けた。
「これから中学でしょ。ヒロ君はおとなしいからいじめられても、お姉ちゃんたちに言ってくれないんじゃないかって心配してるんだー」
なんだか不安になってきた。裕ちゃんたちと中学の話をしても部活をどうするかということばかりだ。
「中学校って、いじめが多いの?」
逆に訊いたら、お兄ちゃんが、
「俺は小学校では気が付かなかったけど、中学じゃ、いじめられていたやつを何人も知ってるぞ」
「昭ちゃんはいじめられていなかったけど、お姉ちゃんはいじめられたんだよ」
由美が
「えーっ。なんでー」
と口を挟んだ。
「私、六年生ぐらいからどんどん身長が伸びたのね。中学生の頃、ひょろっとしていたから、キモイと言われたの。授業で先生に指されて立ち上がるたびに笑われて、授業で声が出せなくなっちゃった」
驚いた。千恵姉ちゃんがいじめられていたなんて信じられなかった。かっこいいお姉ちゃんのどこがキモイんだろう。