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おーい、村長さん

「私は助役をしている青山と申します。他の二人は、こちらが会計責任者の赤坂で、隣が総務部の神田でございます」

二人は小さくお辞儀をした。

「いろいろご迷惑おかけします」

私は再度、頭を下げた。

「ところで、正二さんは今、お仕事は忙しいですか」

青山助役はニヤニヤしながら歩み寄り、私の肩をササっとなでるように触れた。

「実のところ私は、フリーターでして、特にしばらくこれといった予定もないのですが」

やむを得ず本当のことを答えた。

「おや、おや。これはいいじゃありませんか。さっそく、大事なご相談なんですが。フフフ」

悪代官の顔が悪魔へと変わっていった。

「正二さん。とても重要なお願いがあります」

青山助役はニヤニヤしながら私の耳元で囁いた。

「いいですか。よく聞いてくださいよ。あなたは今から『権田原正一』さんになりきってください。今から『権田原正一』さんです。誰が何と言おうが『権田原正一』を名乗ってください。そして村長の代行といいますか、代理といいましょうか、任期満了まであと三ヶ月の間、権田原正一村長の『影武者』をお願いできませんか。本当にソックリですし」

赤坂も神田も怪しい目つきでニヤリと微笑んでいる。私は花瓶で殴られたような衝撃を受けた。

「それは、兄のフリをして、兄になりきって、『村長』ですと名乗って、村の人たちを騙すということですよね。皆さんにウソをつくんですよね」

私は両腕をいっぱいに広げ最大級の反論をした。

「ハイ、ハイ。確かにそうですね。しかし世の中には、ついていいウソもありますから」

白髪の悪魔は再びニヤリと笑う。

「それは、マズイですよ。村長の『影武者』なんて当然、現代の日本では法律的にダメでしょ。戦国時代じゃないんですから。書類にハンコ押したり村議会に出席したりと、大事な仕事ばかりではないですか」

ここは、さすがに頭の悪い私も一般常識としてお断りをした。