【人気記事】「非行」に走った青年時代…医者になった私が当時を思い出すと『腐ったみかんが医者になった日』

第1章 比叡山 焼き討ち 

九月六日<朝倉軍撤退>

義景

「何! 足利将軍が朝廷より『和睦の綸旨』を賜ったと! ありがたい! 戦はもう飽きた。一部の国衆が撤退するのではと心配しておったところじゃ。皆の者、早々に越前に引き上げるぞ!」

<甲府信玄居城>

信玄

「何を! 義景が撤退した? そんなばかな! このまま攻めればあと半月で信長に勝てたものを、千歳一隅の好機を逃したではないか!」

⇒ああー、こんな時に撤退するとは何たることぞ! 戦を知らな過ぎるではないか! これで我が武運も尽きたか…!

あの馬鹿者め! 朝倉が近江に留まり、浅井と連合して美濃に攻め込めば、武田と連携して信長を挟み撃ちにして壊滅できたのに! 戦を知らない公方侍めが! 折角信長に対する包囲網を完了し、喉元に匕首まで突き付けたにもかかわらず、攻める側の大将が逃げたのでは話にならない。義景がごとき大ばか者を当てにした、この信玄の不覚であったわ! このことは将軍義昭様にも報告し、お叱りをお願いせん。

<信長本陣>

信長

「光秀、でかした! 朝倉も撤退したことから、即刻岐阜に戻り、体勢を立て直した上、信玄に備えつつ、小谷の浅井を再度攻めるぞ! 者共、岐阜へ帰るぞ、出発だ!」

⇒光秀よくやった! やはりこの男は織田家に必要だ。厚遇して織田家に仕官するよう勧めねばなるまい。これで譜代の家来共も奮い立つだろう。