彼方から強大な爆発音が響いた。

ドォォォォォォォゴォォォォォォォォッッッンンン!

「終わったみたいだな。」

「・・・・・・・・な・・・・・なな、ななな、なんだこれは!?」

さっきまでの余裕が嘘のように。

グラストは惨めにわかりやすく、滑稽に焦り出す。

「こ、氷人形の気配が消失した!?  ど、どどどどどどういうことですかこれはっ!?」

「だから言っただろ。勘違いしてねぇか?って。」

「ば、ば、ば、馬鹿な、そんな馬鹿な、そうだ馬鹿だっ! 馬鹿なんだっ! こんなことが起こるわけがないっ!!」

「・・・・・・・・・・・」

「あのガキはっ! あのクソガキはっ! 勝てるはずがないんだよっ! クソ勇者さえ倒せば、後は楽勝なはずだったんだよっ! 私の計算が狂うわけがないんだよっ!」

「こっちも終わらせるか。」

その刹那、シンの姿が掻き消える。

シュッ

・・・・・・・・・小さな風切り音が鳴った後、消えた彼は、グラストのすぐ背後にいた。

(ッ! いつの間に私の後ろにッ!)

グラストは振り向くと、その無防備な背中に、渾身の一撃を叩き込もうとする。

(死ねッ! クソ勇者めッ!!)

・・・・・・・・・・・・・・・しかし、いつまで経とうと、その一撃が放たれることはなかった。

ゴトッ

無機質な音が地面に鳴り響いた後、グラストはようやく・・・・・・・・・・・・・自身の頭部が、胴体から切り離されていることを理解した。

(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?)

理解不能。困惑。理解不能。困惑。理解不能。困惑。

唖然。呆然。唖然。呆然。唖然。呆然。唖然。呆然。

グラストの脳裏がそんな言葉で埋め尽くされた。

(なんだこれは? あいつはいったい・・・・・・・なにをしたんだ?)

端的に言うと、手刀である。

シンは、グラストに近づき、手刀で首を切断した。

それだけである。

そこには戦いもなにもない。

あるのは・・・・・・・・目にも留まらぬ速度で相手に接近し、目にも留まらぬ速度で手刀を行った・・・・・・・・・その事実だけである。

「まだ意識があるなら聞け。」

「魔王とか、魔王軍とか、四天王とか、俺は心底どうでもいい。」

「お前らがなにしようが知ったことじゃない。」

「けどな、ユウに・・・・・・俺達に・・・・・・・・これ以上関わろうとするなら。」

「容赦はしない。」

「俺の幸せを邪魔しようとするなら、俺は悪魔だろうが神様だろうが・・・・・・・・倒してやる。」

グラストが最後に見た光景は・・・・・・。

凍てつくような鋭い目つきで、自分を見下ろす死神のような勇者だった。

【前回の記事を読む】何一つ救うことが出来なくても。覚悟を決め、勇者たちは隣国へ足を踏み入れる。