小説 『魂業石』 【新連載】 内海 七綺 沼のような目でこちらを覗くおじさん…通り過ぎようとしたら、ランドセルにかけた給食袋を引っ張られ、後ろから口を塞がれた。 茜色の気配が透明な青を少しずつ蝕む帰り道だった。背の高いブロック塀に囲まれた脇道の暗く湿った闇から、男がじっとこちらを覗いている。瞬き一つしない、暗い沼のような目。変なおじさんだ、と雪子は思った。姦(かしま)しく笑っている亜弓(あゆみ)たちは男にまったく気づいていない。そのまま一緒に通り過ぎようとしたら、ランドセルにかけた給食袋をつかんで引っ張られ、後ろから口を塞がれた。叫ぶ暇もなかった。亜弓た…
エッセイ 『保健師魂は眠らない[注目連載ピックアップ]』 【第11回】 真秀場 弥生 呼吸は体の不調の根源?「体の右半分に呼吸を取り入れて...」と先生が摩訶不思議なことをいうバランス体操のレッスンに参加すると...... 【前回の記事を読む】相談の結果、漢方の煎じ薬を処方してもらうことになった。不安だが、簡単なうえに美味しい。そして漢方には即効性もあった。その頃は健康増進法が施行されたことで住民の健康増進のための運動普及が保健師としての役割として求められる時期だった。私は市町村の保健師たちと一緒に運動普及に日々、奔走していた。そんな中で、私は「操体法」に出会った。私は、その頃から腰痛や下肢痛としびれをいつも抱えて…