そこで、外資系金融機関で社員やマネジメントとして勤務していた一人として、つぎのような観点から、ビジネスにおける実務的なことについて、違いやその原因、背景や気をつけるべきことなど事例をあげて説明し、多くの人たちに知ってもらうのは意味のあることと思うようになりました。

外資系と日本の企業の組織や文化で違うところや似ているところ、マネジメントの経営にかかわる考え方などの違い、表面的には見えてこない外国人マネジメントの考え方や行動の裏にあること、外国人にはわかりにくい日本人社員の考え方(マインドセット、 Mindset)、日本人として外国人マネジメントと接触する際に注意すべきことやその理由

ほとんどの日本人は、英語ができれば外国人とコミュニケーションができると思っていますが実はそうではないこと、そしてそれはなぜなのか、異文化コミュニケーションの注意点や課題、コミュニケーションの実質的なベースとなっている言語つまり英語と私たちの母国語である日本語など

この本で触れていることは、日本の会社や外資系で現在勤務している人、外資系への転職を考えている人だけでなく、就職を控えている学生にとっても参考になるはずです。

さらに、異文化コミュニケーションにかかわる学部や学科の現役の大学生にとっては、ビジネスにおける実務的なエピソードすなわち異文化コミュニケーションの実例に触れることで、大学の授業で学んだことをさらに深く理解するのに役立つでしょう。

またビジネスパーソンや学生だけでなく、外資系とは直接かかわりのない多くの人たちにとっても、外国人との意思疎通すなわち異文化コミュニケーションについて知ることで、仕事や商売の参考になると共に、さまざまな人たちとの相互理解を深める一つの指針になるでしょう。

この本が読者のみなさんの学業や仕事、活動の一助になれば幸いです。

1 外資系でよく見かける社員

日本の会社で働きにくい人、外資系で評価される人

外資系で働く人たちと日本の会社で働く人たちを見ていると、はっきりとした線を引くことはもちろんできませんが、何となくどこか違いがあります。

日本の会社では自分の能力を発揮できなかったり、自分の能力や成果などを認められなかったりした結果、新たな機会を求めて外資系に転職した人も多いでしょう。自分のやりたい仕事をするための積極的な転職もあるでしょうが、そうではなく結果として転職することになり、応募した会社が中途採用をしている外資系だったという人もいます。

そういったことを念頭に、外資系に来た人や外資系で働いている人を見ていると、この人はどう見ても日本の会社では働きにくそうだ、高く評価されそうもないと思われる人がかなりいます。もちろんこれは外資系の会社か日本の会社かの「二社択一」ではなく、どちらでも評価される人もいればその逆もあり得ます。ではその違いはどこにあるのでしょうか。