夜、夕飯も済み後片付けの手伝いも終わり、部屋でゴロゴロしていると兄に呼ばれた。
「おい洋子、電話だぞ」
そう言いながら兄が携帯を渡して来るので不思議に思いながら出てみると、致嗣だった。
「どうしたのよ! お兄ちゃんの携帯に掛けてくるなんて」
恥ずかしさと怒りで大きな声で詰問する。
「大声出すなよ、日曜の事だけど何か持って行く物があるんじゃないかと思って……真さんには内緒だと言っていたから、どうかなと思ったけど掛けさせてもらった……俺、今日お前の教室まで行ったんだぞ。気が付かなかったか?」
「知っているよ」
「じゃ、何で無視すんだ」怒り口調の致嗣。
「話し掛けたら変でしょ、用があるならそっちから声掛けてよー。いやいや掛けられても困るか……」などと少し悩んでいると、
「真さんに迷惑掛けたじゃないか、携帯の番号くらい教えておけよ。それからさっきも言ったけど持って行く物は無いのか?」
「ないない! 体がいるだけだから」
ついうっかり、口が滑った。
「うぅーむ? お前何か隠してないか……
体がいるって何だ!」
素早く突っ込んでくる致嗣。
「……だから、身一つで、来ていいよって事よ!! ……あぁー携帯番号。そ、そうね、教えておくべきだったわ」
狼狽えながらもすぐに番号を言うと、何とか誤魔化し電話を切った。
一息つきながら携帯を返しに行くと、奇異な目で見ている兄に、友達の部活の相談だったと適当な話をしておいたが、相変わらずおかしな目で見られてしまった。
本当に全く致嗣は厄介だ。
そんな致嗣が、タマの声を聞いたら驚くだろうな、考えただけでも面白くなる――ふっふっふっふう――ああ日曜日が楽しみだ~
そんな事を思いながら、時間は過ぎていった。