第二章 招魂と入れ替わり
早朝、畑に朝食に出すトマトを採りに行くと、タマがまた野菜を食べている。まだ早い時間なのに大丈夫かなぁー、人に見られるよ。
「タマ久しぶり、早くからこんなところで食べていて大丈夫」
「まぁー大丈夫だ。お前んちの裏の畑はあまり人が通らない」
「そうだっけ? 丁度いい。帰ってから八幡社に行こうと思っていたんだけど、報告。水野致嗣は日曜の午後二時頃、八幡社に来ます。
趣味で色々この辺りの事を調べているから社の中を見ようと思うけど、興味があったら一緒に行かないかと誘いました。終わり。
後はよろしくね。私学校があるから帰ったら八幡社に行くね、聞きたい事あるから」
私はそう言うとバタバタと勝手口に走り込みました。
学校に行くも致嗣は素知らぬ顔である、そりゃぁ当然だな。授業も受けるには受けているが気持ちはもうタマの所にある。
授業も終わり帰宅すると、すぐに八幡社へ行く。タマ居るかなぁー、いたいた!
「タマ~ねぇねぇー朝の続きだけど、用意する物があるって言ってたけど、何揃えるの」
「なかなか探せないし、乾燥の時間も無いので、漢方薬の店に行こうと思っている」
とタマが言う。
揃えるつもりなのは漢方生薬なのね。
「店に行くって買い物じゃないよね、と言うことは店に入り込むって事? ……何、泥棒猫になるの!」
「人聞きが悪いな、ちょっとの間飼い猫になって家の物を少し使わせてもらう訳だ」
「何か同じような気がするけど……まあいいや、それで漢方薬を戴くのね。それどう言う効果があるの」と私は聞いてみる。
「何と言うか、精神状態を高めると言ったらいいのかな、あまり聞いた事がないと思うけど、釣藤鈎、大棗、茯苓などと共に柴胡 甘草、当帰、川芎などなど、殆どが植物性だが中には動物性の物もあり、まあ漢方薬店で揃えた方が確実だなっと思ってよ」
「ふぅーん、知らない名前の漢方薬ばかり、甘草だけは聞いた事あるような気がする……何か手伝えることはないかと思ったけど、私では無理ね。それでそれ、いつ揃うの?」
「少しずつ持ち出しているから日曜までは掛かるな」
「わかった、じゃ日曜にここに来るね」
そう言って私はタマを残し帰ることにした。いつの間にか金星が空に光っている。何か幸先がいいような気持ちになる。
金曜日、学校に行くと致嗣が私の教室の前をうろうろしていたが、話し掛けるのも変なので無視していた。