第二章 招魂と入れ替わり
土曜日の午後、緩やかな風に吹かれて私も昼寝がしたいよと思いながらも、帰ったら兄に聞いてみようなどと考えている。多分まだ釣りから帰ってないだろう、でも突然あいつの事を聞いたら変に思うよなぁ。
それはさておき、まずあいつの嗜好を調べておいた方がいいような気もするし……必要ないか! 却って兄に恋バナかと思われかねないから止めておこう……とにかく、明日直接話してみよう……
どういうふうに話し出そうかなぁ、好きな女子嫌いな女子なんて話から入っていこうかな、聞いてどうすんだ? 話の取っ掛かりをを掴むため……いや、むしろそんな事話していたら長くなる……簡潔に八幡社に来てほしい。うん、これで行こう!
色々悩んだが決めてしまえば、落ち着いたもので、後はその言葉に枝葉を付けてなどと考えながら日曜日を過ごした。
週明けの月曜日、早速話し掛けようとするも、いつも誰かと一緒なのだ。目立たないように話し掛けるのって難しい。火曜日、朝からあいつの事ばかり考えている。まるで恋愛しているみたいだなぁーそんな事を思っていると、あっという間に一日の授業が終わる。部活中は話などしている暇はないし、帰りは友達と連れ立って帰るし、帰る方角も全然違うので帰り道に会うことも出来ない。
――いつ話せるんだぁぁ!――
水曜日、やった! 図書委員会だ。あいつは一組、私は五組の図書委員だから、放課後図書利用の向上と入庫書籍の希望アンケートに関する話し合いで、月に一回会っている。希望書籍をアンケートに書いても入ったためしがない。予算が無いのか先生方のお眼鏡にかなわなかったのか知らないが、そして利用者も殆ど無い。こんなことは必要なのか? といつも思っていたが、今回はもっけの幸い、とにかく終わったら話し掛けてみよう……
いつも通り余り発言も無く、決まり事の伝達とアンケートを速やかにまとめ上げるようにということで終会になる。教室を一人で出ようとしている、あいつに声を掛ける。
「ちょっと話があるんだけど来てくれない」
と呼び止めた。振り向きざま驚いた顔で
「なんだよっ」
と言って来るあいつ。
「人目もあるから体育館の裏へ行こうよ」
と真剣な私。
「体育館の裏なんて、ちょっとやらしいぞ」
なおも驚いた顔で言う。
「何言ってんの、話だよ話、ほら来てよ」
苛立つ私に気圧され、少し大きな声で
「話ならここでしろ」
とあいつが言う。