翌日、夜が明けると高垣は西田へ連絡をして、翔の入院している病院で会おうと話した。高垣は心配で落ち着かず、早く病院へ着いたが病院の前はひっそりと静かな雰囲気だった。
暫くして西田が着くと直ぐ二人で病院の出入口を押して入った。ホールには数人の男が疲れたように待合室のシートに横になって寝ていて、傍では警察官二人が何かの話をしていた。
出入口脇に立っているガードマン風の男に入院している人の部屋番号は何処で分かるか尋ねたところ、奥に看護師が居る筈だから其処で尋ねるように指示され二人は向かった。
看護師の部屋はライトが点いていたが薄暗く不在だった。呼び出しベルを叩くと若い看護師が顔を出し、何か?という表情で眉を上げた。
西田は「昨日の事件で入院している筈の身内の者ですが、見舞いたいので病室を教えて頂けますか?」と丁寧に話した。其れを受けて看護師は「身分を証明するものを提示しなさい!!」と指示した。
高垣が英国四井物産のIDカードを取り出して看護師へ提示し、「英国四井物産の者が入院しています」と伝えた。看護師は後ろに戻って直ぐリストを確認し、見つけたようだが入院者の名前を聞いてきた。
高垣は「ショウ・カツ」と応えると、看護師は「未だ面会時間前だが事件で心配だろうから特別に許可する。静かに行くように!」と伝え、「寝ていたら決して起こさないように!」と指示した。
二人は静かに階段を上がり、203号室の前に着いてゆっくりと扉を開けた。
入口傍のナースが振り向くと高垣は小さい声で「ショウ・カツのベッドは何処ですか?」と尋ねるとナースはニコッと笑い、「先程どうしても仕事が有るので!!と言って出て行ったわよ。夕方帰ります!と言って……」
二人は吃驚して「怪我の容態が酷いのでは?」と聞くとナースは「昨日の手術の結果が良かったようでさっきパッドを取り替えた時は元気そうだったわ!」と応えた。
高垣と西田はそれを聞いて呆然としたがお礼を言って部屋を出た。階段を下りてホールを抜け外へ出ると直ぐ翔のスマホに電話をしたが全く通じず、伝言を残して切った。