唐突に自己紹介が始まり、(おもむろ)に財布を取り出しその中にあった「学生証」を俺にチラチラと見せてくる。

「(大学一年生ってことは中二の俺と5歳違いか)」

と、そんなことを考えながら俺も最低限の自己紹介をする。

「はい、えっと、西…条、レッカです。よろしくお願いします、院……さん」

「ん、よろしく」

「……えっと、何で、俺の名前知ってたんですか?面識は、ありませんよね?」

「うん、面識はない。でも、オレはおまえのことを知っている」

「何で、ですか?」

かなり怪しい。怪しすぎる。普通自己紹介とかで、いきなり「学生証」とか自分の個人情報をベラベラと喋るか? きっとこの人は「俺に何かを要求してくる」。

怪しげな彼の言動から俺はそう確信出来た。

「主に、一昨日のおまえのこと。あの力のことで」

「!!」

昨日のあの事件について知っているとなったら、当然、彼はあの力の事を知っている。大暴露してくる彼に、俺はこう思った。

「見られた、正体がバレた」と。

それくらい俺にとってあれはまだ新鮮なもので、恐怖さえも感じられるものだ。さらりとそんなことを言える以上、

「何故この青年がそんなこと知っているんだ?」

という疑問さえも膨らむ。ぶっちゃけ

「何の接点もない謎の青年からそんなこと説明されたくなかった」

というのが素直な感想だ。どうなるんだ、これからの俺の人生……。最悪、人為らざる者として何処か遠い所で罪を計られ、海外に飛ばされ高値で売り飛ばされるのがオチか……。

【前回の記事を読む】「いつもの部屋じゃない」混乱する少年の目の前にいたのは…