次に、お元気な方が食事をするエリアで何ができるでしょうか。生活スタイル、つまり「暮らし方」を考える時、自分ひとりではなく、みんなで考えたほうが良いと思います。

そこで、施設の職員だけでなく、入居者の皆さんからも広くアドバイスをもらいました。その中で、机といすの脚を切り揃えて、それぞれの高さを調整、サンプルとして組み合わせを「3パターン」用意してみました。当然、ご入居者様の皆さんにも実際に座っていただき、アドバイスや改善すべき事項を伺います。

その結果、3パターンの高さで対応できそうだと判明し、他の机やいすの高さを各々のパターンごとに切り揃え、レストラン内に配置しました。この取り組みはレストランを利用するご入居者様には好評でした。

このことから私が学んだのは、この老人ホームで暮らす入居者の皆さんと一緒に暮らし方を考え、暮らしを作り上げていくということです。昨今、老人ホームの運営や介護の方法において、効率性を重要視する傾向にあるのも事実です。確かに限られた社会保障費の中で、老人ホーム運営や介護保険制度を持続可能に運用していくには、効率性が求められることは当然です。しかし、このように老人ホームの入居者と一緒に暮らし方を考え、創り上げていく方法を取る場合、効率性という話だけでは収まらないと思います。

このように入居者と暮らし方について、対話を重ねて意思形成するのにも時間が掛かるでしょう。暮らし方というのは、人間が尊厳を持って生きていくうえで一番大切なものです。老人ホーム運営において効率性も大切ですが、入居者が人間として、自分の暮らし方を大事にするという視点は、より大切なのではないでしょうか。