縁の下の知力持ち
自由研究(小学五年生編)
夏休みの宿題で、もっとも頭を悩ませるのが自由研究です。自由の文言を信じ、自ら作詞作曲した歌の録音テープなぞ提出した日には、先生から「真面目にやりなさい!」の叱咤と「折角なので、皆で聞いてみましょう」という、冷酷な公開処刑が待ち受けています。
去年、不運にもそれを実行した子が、担任教師への熱烈なラブソングを漏らされ、先生命の『Tコン』なるアダ名を頂戴。心ないイジメに遭うも、当人は歯牙にかけず、真摯に音楽活動に専念。十三年後、飛ぶ鳥を落とす勢いのシンガーソングライターに変身し、胸のすく下剋上を果たしました。
同じ歌でも、般若心経を毛筆で写経し、同じく毛筆で、己の観点から深遠なる見解を綴った女子生徒には、先生もいたく感服。「神童ここにあり!」と太鼓判を押したのでした。
私はというと『夢の研究』なる実験記事を提出。生徒らには好評でしたが、先生は渋い顔をしていました。
さて、今年はどうしたものか。
友達に相談しますと、皆自由研究には手をつけていない様子。
「折角だから合同研究にしない?」
一人の発案から、かつてない大規模なプロジェクトが行われました。
題して『ネコの通り道』。ネコの頭上に小型のビデオカメラを仕掛け、いつどこを通るのか、モニター越しに観察しようというのです。
参加メンバーは私と、カメラの提供者・寄鳥みどり、ネコの飼い主・二言あまりの三名。私は方眼紙に、町内の俯瞰図を丸々一週間かけて作成。コレに赤鉛筆で、ネコの軌跡をたどります。