もうひとつ記載しておきたいのは、面接試験においては、学生の新鮮さなどの観点から、浪人生に比べて現役生の方が有利になる傾向がある点です。

医学部入学が難しいこともあり、どうしても二浪三浪の人も受験してきます。長年受験勉強で苦労してきたことは理解できます。でも将来医師としてどの程度ふさわしいのか、の観点から面接評価されると、そのような学生にはどうしても辛い点をつけられる傾向のあることは断っておきます。

面接を受ける学生さんは、きっと予想質問を予備校などで聴いて、あらかじめ準備しているはずです。たとえば“最近読んで感動した本は?”などとこちらから質問すると、得意げに模範解答をスラスラと答えます。

それではもう一冊本を紹介してください。”と尋ねると、本当によく読書しているなら、スラスラと回答してくるはずです。単に面接だけのための準備をしていたのなら、この二番目の質問では立ち往生するかもしれません。

よく面接で出てくる質問に、尊敬する人物もあります。これも同様のことが言えます。面接で聞こうとするのは、医師としての将来展望はもちろん、これまでの実際の日常活動や考え方、取組もうとする姿勢なのです。それらについて実際の自分自身の姿を、ありのままに語ってくれればよいのでは、と思います。

面接の実施についてはいろいろな意見があります。たいていの場合は、学生を一人ごとに、複数の教員で評価します。ただこのやり方だと、学生はかなり緊張します。リラックスさせるための配慮が必要です。たいていの場合、受験生をリラックスさせるため、最初の質問はだれでも答えられるような、簡単な質問をするなど、心配りをしています。

医学部の面接からは離れますが、面接によっては5人から10人くらいの学生を集めて、総合討論をさせて自由に発言をさせる、集団面接もあります。社会人としての素養を見るには、極めて良い方法だと思います。受験生にとっても、発現の自由度が増してよいかもしれません。

ただしそのような総合討論形式の面接をする場合には、その後に必ず個別に面接をして、自分の意見を語らせることが必要だとされています(グループによる討論だけで評価すると、積極的な人は有利に、また消極的な人は不利になってしまいます)。このような形式で面接を進めると、おそらくかなりの時間と労力を必要とするでしょう。大学入学試験としては採用されていません。

繰り返しになりますが、社会人としての素養を評価するには、学力評価だけでなく、将来医師としての適性をみるための評価を、何らかの形で加えようとしていることを強調しておきます。もちろん合否のかかる重要な面接なので、実施する側も、慎重かつ的確な観点で実施する責任が大きいことも付記しておきます。