「そうだよ」
「ステファニーさんに説明してなかったのか」
「俺らの関係性について、ライトを含めた男性四人と女性五人がいることぐらいしか伝えてない。説明するより実際に会ってもらった方が混乱しにくいからな」
「たくさん時間あったのに一度も話さなかったのかよ」
トラヴィスは会話が止まってしまったことに不満を抱いたようだ。トラヴィスの話はステファニーに説明済みだから文句をいうことはないだろう。俺はトラヴィスがクッキーをこぼしながら食べる姿をみてから
「マリッサのことは先に紹介できてよかったかもな。トラヴィスとマリッサの仲の良さを見たら、誰だって恋人だと勘違いしてしまうからな」
といった。「もういい」といってトラヴィスは眼鏡をクイッと持ち上げた。
「おいおい、そう怒るなよ。俺が真剣にトラヴィスの相談にのってやるから日頃のストレスを発散したらどうだ」
俺はテーブルに置いてあったリモコンでテレビをつけ、トラヴィスの後ろにあるトーク番組の再放送をしているテレビに視線を置いた。ステファニーはトラヴィスから視線を外さない。
「ギルバートのアドバイスなんかはいらない。それにストレスなら子供にぶつけている」
耳を疑うトラヴィスの発言に俺はすかさず視線を戻した。
「トラヴィスさんって婚約者でしたっけ」
ステファニーはそういったが、最初に疑問に抱くのはそこじゃない。
「ついさっきまで片思いの話をしていたのだから結婚して子供がいるはずがないでしょ」
俺がステファニーに説明しようとすると
「遠い親戚に子供がいるということですか」
とトラヴィスに問いただした。
「そうじゃないって」
と俺は頭を抱えた。ただ、発言を理解できなかったのはステファニーと同じだった。ステファニーの発想よりもトラヴィスの考えの方がついていけない。