長い夢
中は薄暗く、何人かの初老の男性がいる。彼らは無表情であるがうっすら笑みを浮かべ裸で佇んでいる。ビニールレザーの医療用ベッドに寝かされている多数の女性にはシーツのようなモノが被されていた。
初老の男性は一人の女性のシーツを取り、左手で女性の左の乳房を触れ、すぐに右の乳房を触った。女性は身じろぎ一つせず、男は右手で女性の性器を触り、左腕で女性の膝を抱え右腕で女性の左膝を抱え性行為を始めたが女性は左に顔を向け唇は半開きでマネキン人形のように無表情だった。
男は全ての行為を終え女性から離れた。その表情には感情のかけらが全くなく機械的な表情だったが、男の顔全体は上気して赤みが差し目はどこを見ているのか分からなかった。
女の顔は相変わらずロボットかマネキン人形のように無機質だった。
室の中は薄暗い。何のための実験なのか行為なのか、単に男の性欲を満たすだけの行為なのか全く分からなかったが英良は性格的にこのようなことが嫌いだった。気持ち悪いというか自分には到底考えもつかないことが目の前で行われていることに嫌悪感を持ち受けつけなかった。
この後に英良は貧血のような状態に陥り、気が付くとどこかの熱帯雨林の中にいた。うっそうとした森林地帯はどこまでも木と草で延々と続き、時々見たこともない野生の鳥達が空中を飛び交っている。道らしきものはほとんどなく、獣道が森林地帯を縦横に結んでいる。
暫く進むと英良は開けた広場のような場所に着いた。広場といっても整備された場所ではなく砂利や砂が多く残った荒れた学校のグラウンドのようだ。そこにはゲリラ兵のような男が四人いてアサルトライフルを装備していた。男達の周りには七歳から九歳くらいの子供達が数人いて白い粉の入った袋を運んでいる。
違法な行為のようだ。最年少らしい少年は四~五キロある白い袋を頭の上に載せ身体は左に傾きながら足元はおぼつかなく歩いている。九歳くらいの少年は同じような袋を右肩に載せ真っ直ぐに歩いていく。そんな状況を並走した男達は両脇から監視しながら歩いていた。
全ての事象が全く理解できなかった。気が付くと英良はとある町を歩いていた。古い町並みで、昭和三十年代の雰囲気がある。看板がカタカナのものがあり、漢字が全て旧漢字。歩いているうちに英良は自らの力で宙に浮いて移動し、ちょうど電柱の上辺りを飛んでいた。
次第に飛ぶ速度が増していき、電柱の上よりも高く飛んでいてどこかの湿地帯の上空にいた。眼下には池やら沼地がたくさんあり、低い灌木が密生していた。ますます速度は増し、見知らぬ山間部を猛スピードで飛んでいた。山霧に突入したかと思ったら、突然明治時代か大正初期の町並みを歩いていた。周りは全てが木造で建物の前に和服姿の女性が佇んでいる。