第三条「個室を持たせない」

子供に個室を持たせると、不登校傾向を促進させることになる。「個室を与える」ということは、その中で「好き勝手にすごさせる」ということに等しいのである。

私の体験の中にすぎないかもしれないが、情緒性が発達しており、よく宿題もやって来て前向きに学習にも取り組める子は、不思議な位、個室を与えられていない子に多い。住宅事情の時もあるし、両親の方針の時もある。

好き勝手にすごす場所

子供はギャングエイジをすぎた頃(小四、小五位)になると、口うるさく個室を欲しがるようになる。要するに自分の世界を持ちたがるのだ。その時に個室を与えるにしても、もっと幼児期から与えるにしても、そういう中で子供の個性が華々しく伸びるという事はないと思われる。

静かに勉強に取り組める部屋があるからと、そこに長時間閉じこもって勉強をする小学生がいるだろうか。

「部屋があるのに、全然、勉強しません」

と、どのお母さんも言う。それに対し私は、このように応えている。

「中学生でも、一、二年生だと、親のそばにいたがります。親のそばで勉強したがります。それでいいんです。リビングルームがうるさくなって、部屋に行って勉強するようになるのは、テスト前の数日間とか受験前です。そういう時は勉強も本当にやっているでしょうけど、ふだんは、好きな事をやっているだけじゃないですか?マンガ見たり、パソコンゲームしたり」

学校がイヤになった時に自分の部屋で勝手にすごせるなら、居心地が良いために不登校になりやすい。個室がなければ、いつも家族と顔を合わすので、親がよっぽど何も言わないなら別だが、普通は居心地が悪い筈である。

第二条の「形を求めすぎない」の無行(むこう)青年(せいねん)のB介君は、個室を与えられていなかった。私は、B介君は自分の個室が無かったため、小・中の厳しいイジメの中でも不登校にならなかったのだと思う。家にいると、しょっちゅうお母さんと顔を合わせる。お母さんは自分に対し、いつも、イライラしている。そのため、とぼとぼと学校に通い続けたのではないだろうか。

イジメにあっても登校した方が

B介君は不登校だった事はなかったが、結局、高校卒業後、行く場所がなくなった時に引きこもりになった。しかし、行く場所がある時は出かけていたのは、全然、外に出ないより良かったのではないだろうか。もし個室があれば小・中で不登校になり“普通でない感じ”は、もっと強まっていたのではないかと思う。

もたれあう日本人

アメリカなどでは、中産階級であれば子供は幼い頃から自分の部屋を持つようである。生まれた時から子供部屋に一人で寝かすのだ。これは、幼い頃から「自分」という中心を育て、自分で決めた事に責任を持たせるという育て方の中で行われているのである。

しかし、日本人のような「もたれあい」「なれあい」「あいまいにする」国民性の中では、大部分の子供は、自分の部屋は好きなように散らかしたり掃除をしなかったりする。そしてマンガを見たりゲームをやったりする場になってしまう。

だから、日本の場合、幼児や小学生に個室を与えるのは「自分勝手に暮らす場所を与える」ことになると言えるのではないだろうか。そして、好き勝手に暮らせる場があれば、学校生活が面倒くさい所になると引きこもりやすいと言えるのではないか。

子供に、完全に孤立できるような個室を与えるのは、中学三年位になって、本格的に受験勉強に取り組むようになったりしてからがベターであると、私は体験から言えると思う。