昔を思い出したようで少し悲しげなタマ。

「じゃあ、タマはどうなるの?」

徐福が死んだのなら……

「俺は入尾に入ってから生まれ変わった。そしてご幼少だった致高様に可愛がられた。父君が早く亡くなられたのでお寂しい思いをされていたし、母君は産後の肥立ちが悪く、既に身罷(みまか)られていたから、俺の事をそれは大事にしてくれた」

「水野致高のペットだったの」

思わず聞いた私を睨み付けると、

「失礼な奴だな、話し相手だよ。もっと言うなら友達だ。もうその時には俺の能力もお伝えしていたから、本当にご自分の思っている事などをお聞かせ戴いていた」

「じゃ今の私達みたいに話してたってこと」

「まあそうだな、だから叔父に毒を盛られた時も(お前と多く語らう事が出来て良かった)と言ってくださった」

「幾つで亡くなられたの?」

タマは少し考えたがすぐに答えた。

「……元服をされてからだから、丁度お前と同じくらいだろう」

それを聞いた私は思わず叫んでいた。

「えぇーーっ! それは可哀想過ぎる。猫と話すのだけが良かった事なんて、恋もしてないのよね……どうにかならなかったの!」

「俺は超能力があるわけでもなく、ただ長い歴史を記憶しているだけだから……油断の無きように俺なりに気を配ってはいたつもりだったが、如何せん猫一匹の気配りなど、たかが知れておる。お味方しておられた家臣方でもお守りする事が出来なくて……おいたわしい限りであった。

だから叔父達が城主になっても離反する者が出て来てしまうなど、諸々の不運が続き廃城になってしまった。悪事千里を走るの(ことわざ)もあるように、いくら隠しても漏れ聞こえてくるものらしく、それに加えて良心の呵責(かしゃく)、先祖への後ろめたさなど精神的な負い目は大きいからなのだろう……

その後離散した一族縁者や元家臣らによって、お墓とは別に少しばかりの社が建てられ致高様の義憤をお鎮め致そうとお参りされていたのだ。そしてそこはその後八幡社になったと言う次第だ」

【前回の記事を読む】「俺も随分長く生きてきたけど…」猫のタマ、とんでもない過去を語る!?…!?