第一章 不思議な出会いからの始まり
「(私の時代は終わった。もう何もする事も出来ない。この後は男王が立ち治めるが上手くゆかず国は乱れる。そこで私の一族から巫女が出て治めると国は落ち着くが長くは続かない。その後もまた変わって行くだろう。もはや私のあずかり知らぬ事。……長く生きてきた私の魂はこの猫の中にある。どうか共に連れて行き生きられなかった平凡な暮らしをさせてくれ)
と言う卑弥呼の話を受け、徐福は猫を連れ彼の地を去り大和へ赴く。
この地で森羅万象全ての物に神が宿り、それを奉ずる卑弥呼の考えを教え説きながら長く静かに暮らしていると、近隣の者からは医者のような扱いを受け大層重宝がられて毎日を送っていた。そうして何年か経った折、宮中に召されることになる。
そこで大陸文化の話をするのだが、どの話も古すぎて役に立たなかった。そこで丁度その頃臣籍降下された平高望様が上野介の地位を賜り任地へ赴く折、同行させてもらうのでありました。高望様は任が解かれるも彼の地に留まり、常陸下総の豪族と結びつき勢力を伸ばされます。
その後、子孫である平影貞様が勅令を受け入尾に入郷されました。保元平治の乱を経て近隣も支配下に治め、水野氏と改名され入尾城を築城し居城とする事になる。私がお仕えした、水野致高様は曾孫に当たられる。
この頃には西の方では室町幕府も三代将軍足利義満の嫡男と扱われた、藤原慶子との間に出来た義持が第四代将軍として家督を継ぎ、義満の死後も安定した政権を築いていたが、国は乱れていた。東北では伊達持宗などが挙兵し九州では島津久豊が伊集院頼久と鹿児島で戦い、それを治めるため幕府は、それぞれに派遣した者たちに追討させるなど、それなりに国内では色々な事が起こっていた。
話を戻すと水野致高様は十二月二十四日に家督を継ぐも四日後の十二月二十八日に城内にて逝去される。父が早世したため、叔父である致国様が後見となっていたが、元服を終え名実ともに城主となり得た致高様との実権争いが水面下で起こり、謎の頓死により家督は叔父の致国様がお継ぎになられた。
しかし城主になられるも間もなく亡くなり、致国の総領が跡を継ぐもすぐに病没、そして次男三男と相次いで亡くなり、色々騒動があり家臣は散り散りに、その後入尾城は廃城となってしまう。それから何年も経った後、そこは神仏を祀るという形で八幡社が建てられ今日に至るという訳だ」
黙って聞いていた私は、思わず言ってやる。
「徐福やタマは何処に出て来るのよ」
「ああそれは、先にも言ったと思うけど平高望様に同行して任地へ行き、その後平影貞様が尾張に行かれる折同行する事になるのだが、勿論俺も一緒だ、でも徐福は入尾に入る前、旅の途中で亡くなったんだ。いくら不老不死でも千年余りも生きれば細胞にも限界があるのだろう、わからないが」