第一章 不思議な出会いからの始まり
でも入尾城については瀬戸の郷土史などで調べても城になる前が出てこない。やっぱり、これはタマに聞くしかないなと思うのだった。
そうこうしているうちに、土曜日になる。
私は家の手伝いを終えた午後、昼寝中だろうタマを八幡社に探しに行くことにした。
家を出る時、またあいつが来ていた。
――水野致嗣だ。――
小五の時、友達と遊びに来ていた水野川で流されたのを兄に助けてもらってから、何かと言うと兄の周りをうろうろして、気が合うのか二人でよく釣りに行っている。
今日も天気が良いので釣りに行くんだろうけど、私には学校で顔を合わせても知らんぷりなんだよね、何か腹が立つ。
私は学校ではそんなに目立つわけでもないし、水野だってそれほど女子の注目を集めているわけじゃないんだから、挨拶くらいはしてもいいと思うんだけどね。
――私から挨拶する――とんでもない、何か負けたみたいで嫌だ!
まあ、あいつの事はさておき。
タマ元気で寝てるかなぁー急ごう!
森深い八幡社には、それでも所々に木漏れ日が落ちていた。
そんな中、木造で作られた社の階段部分に、神の啓示を受ける時のような、斜めに光が注ぐ所にタマは寝ていた。
おかしな格好で寝てはいるが、本当にしゃべるのかと思うほど……普通の猫だ。
「タマ、タマ……久しぶり」
声を掛けるとおかしな寝姿のまま、こっちを見る。
「俺を呼んだのか?」
「うん、猫なんて言う呼び方、嫌だから、タマって名前にしました。どうぉ気に入った」
と聞いてみると冷めた言い方で、「まぁ俺はどっちでもいいや」と言うのだった。ちょっとガッカリ……気を取り直して疑問に思っていた事を聞いてみる。
「早速だけど入尾城の事や、もっと昔の事を教えて」
「藪から棒に何だよ」
「だから、昔の事が知りたいの。その話の中にはタマの事も出て来るんでしょ。教えてほしいの。話して」
私は調べられなかったけど、タマの昔語りなら古墳やしゃべれるようになったタマの事、どうして八幡社に拘っているかなどがわかると思うのだった。
「うぅーん、いいけど。どれくらい前からだ」
「そうね……じゃすっ飛ばして卑弥呼からでお願いします」
「でも知ってどうすんだ」
「ただ単純にどうしてタマがしゃべれるようになったかなど知りたいじゃない、それがわかるのが過去の出来事だと思う訳よ。別にそれでどうこうしようって事でもなく、ただの探究心だから」
私は本当にタマがそんな昔の事を知っているのか聞いてみたかった……