例えば、剣道の練習のとき、突きをしてくる相手に、

「鋭い突っ込みだが、痛いだけでおもろない。突くポイントが違う。剣道では一本でも、お笑いでは零点やね。やっぱ、突くなら股間でないと。反則やけど、ポイントになんねん。チンってゆうやろ。それポイントが入った音やねん。反則やけど」

とか、

「面、面っていうけど、ラーメン屋かいな、なんてね。面打ってその勢いでくっついてくるんなら、その面はソバやね。ソバの麺打ってくっついて、わたしゃあんたのソバがええ、なんてな」

などと返しを考えていて、つい、攻撃を受けてしまい、ゲホゲホとなるのであるが、ボケてもいないのに突っ込むなんて、とまた返しのネタをつい考えてしまうのである。

しかし、剣道では、わざと少し隙を作って相手の攻撃を誘っておいて、その攻撃をかわして反撃する攻撃方法もあり、これこそ、ボケと突っ込みそのものと感激することもあった。

法律の講義を受けていても、「公務執行妨害罪」なんて言われると、

「公務、こうむ、コーム、つまり櫛のことやね。『くし』と、『しっこ』と、『妨害』、つまり、櫛でおしっこをしてるのを妨害することやね。櫛であそこをつんつんすりゃあ、そりゃあ、怒られるよ。当たり前だ。そのあと、櫛はどうするんだよ。もう使えないじゃないか。そんなんで髪をとかしたら、くさいし、べたべたするやないかい」

などと考えて、一人おかしさを噛みしめていたりするのであった。

次に、「暴行罪」なんてあると、

「あ、そうか、櫛で、あそこをつんつんしているうちに、膀胱までつんつんすることもあるもんな。そりゃあ、まずいよな。これもっと罪重いよな」

とさらにおかしくなるのであった。こんなことをしながらも、かろうじて卒業して交番勤務となった。そして、加藤との漫才コンビの復活も重なり、いよいよその練習も必要となった。

公務員とはいっても、警察官は地方自治体の職員なので、しょせんは県内での勤務であり、ネタ合わせもできないことはない。畑山は、巡回から帰って交番にいる間にネタを書くようにしていた。

相方もサラリーマンをしているので、ネタを合わせるのは大変である。山は警察官になったので、当然に突っ込みに転向かと思いきや、何とボケの担当のままで、相方の加藤が突っ込み担当であった。ネタ合わせは休みの日にするのが基本なのだが、畑山は日曜が休みになるわけでもなく、夜勤のこともあるのでなかなか休みが合わない。

しかし、あえて休みを合わせることもなく、逆に畑山が夜勤のときには加藤は休み時間なので、そのときに交番へ加藤がやってくればネタ合わせができることに気がつき、むしろ、ネタ合わせがやりやすくなったのである。

二人が交番の奥でネタ合わせをしているときに交番に本部から連絡の電話があると、つい、

「何だっちゅうねん」

と漫才の調子で突っ込みを入れてしまい、叱られることがあった。それでもネタ合わせを続けた。狙うは、年末のお笑い最大のコンテスト、「漫壱」である。その予選は近い。

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