7
大学でクステリアから金の卵を返して貰ったが手が震えているのがわかった。宇宙の年齢などわからないワルテルには何故混乱してるのかわからない。ただ使い道が無くなった遺物を見てワルテルは考える。
この金の卵に描かれている、『ムナワンキマンチュ プサイタ 私を連れてって案内してくれますか?』は何を意味するのか? 道を歩いていると養鶏場が見えた。何を思ったか鶏相手にらめっこして養鶏場のオーナーと交渉を始めこの金の卵を孵卵器に入れてくれないか? と言った。変な人だなとは思われたが快く受け入れてくれた。ワルテルはその孵卵器にはり付いて様子を見る。
……いつの間にか寝ていた。困る客ではあったがお金を払った為、毛布まで用意してくれた。メキシコの夜は冷える。起きてみると金の卵が割れている。これには慌てた。
「イマン スティイキ? あなたの名前は何ですか?」
ケチュア語だ。
「ワルテル スティイ 私の名前はワルテルです」
ワルテルは続ける。
「ケチュア語以外を話せますか?」
「はい、一応」
ワルテル「あなたはどこにいますか?」
「目の前にいます」
ワルテル「見えません」
あるのは割れた金の卵と他の鶏の卵だけだ。
「しかし、私の主人はあなたですよ」
ワルテル「あなたの名前はなんですか?」
「あなたが決めて下さい」
ワルテル「アタワルパ……インカ皇帝の1人だが語源は幸福な鶏だ」
8
大学に行くと何も手に付かず、ぼーっとするだけのクステリアが居た。暗く何も行動しないクステリア。
ワルテル「どうした?」
「……今まで学んできたのが何だったのかな~と思っているの」
クステリアはこのまま研究を辞めてしまいそうな勢いだ。
ワルテル「自信を持てよ。研究の成果を見せてやる。アタワルパ、彼女の腕を掴んで連れてこい」
クステリアはなにかに掴まれびっくりしてるが見えないのでさらに混乱する。左手で掴む方を探して、
「……えっ鳥? 透明な鳥?」と言っている。
ワルテル「金の卵をあれから何故か孵化器に入れたら産まれたのがアタワルパだ。殻は割れてるが持ってきてるよ」
クステリア「遺物を孵化器に入れるっていったい何を考えているのよ。……まあ、それはいいとしてア・タワルパ? かしら? 何ができるの? 透明なだけ?」
クステリアは興味を持ったようだ。
ワルテル「そういえば知らないや」
アタワルパ「一度行ったことのある場所なら何度でも連れて行けます。瞬間移動というものですね」
クステリア「瞬間移動って一体どうやって?」
アタワルパ「双子粒子って知ってますか?」
ワルテル「難しい話はわからん、金の卵のあった部屋の調査がどうなっているか聞きたくないか?」
クステリア「ちょっと、こちらの話は済んでないわ」
アタワルパ「すいませんが私の主人はワルテルです」
クステリアはアタワルパが気になるらしくワルテルの研究室についてくる。