第二部 カフェ「MICHI」が誕生してから
カフェ「MICHI」をオープンし、次の段階に進みたいと思っている秀一は、月一回定休日を設けて、話を聴いてもらいたいと思っている人達に、場の提供をしてみることにしたのだ。
幸いなことに、カフェ「MICHI」は、地域の人々に注目され、人と人の交流が盛んで、憩いの場所にもなっている。月一回の活動が口コミで広がることは、さほど難しいことではないと思っての決断であった。さらに、顧客であるクリニックの医師やナース、心理カウンセラーが活動に賛同し、協力してくれることになり、秀一にとっては、心強い船出となるのであった。
新たなスタートの第二日曜日の午後、秀一と優香は、期待と不安の入り混じった気持ちで来てくれる人を待っていた。すると、女性が一人、また一人、また一人、計三人も来店してくれたのである。
当日は、心理カウンセラーとナースも来店していたので、三人の女性に紹介し、同席することの承諾を得た。七人は、徐々に打ち解けてよい雰囲気になってきた。
一人目の女性が、話し始めた。彼女の話は、家族崩壊寸前の困難を乗り越えて、家族それぞれが自分の夢、自分の人生を見つけたという内容であった。聴いている人達は、話し終えた女性に、感動の拍手を惜しまなかった。
二人目の女性が話し始めた。彼女は、自分で自分の命を絶とうとした経験を乗り越えて、生きる意味を見出した内容を話すのであった。彼女にも感動の惜しみない拍手が贈られた。
三人目の女性が話し始めた。彼女は、誰も見向きもしないであろう保護猫を家族として迎え、夫の命が救われたこと、その猫の最期の時間にどうかかわるべきか、悩みぬいたことが語られた。その女性にも、感動の惜しみない拍手が贈られた。
女性たちは三人共、心が高揚し、さらに前向きになれるのであった。
秀一は、初回にして確かな手応えを感じていた。このままこの活動を続けたい、と思うのであった。
五人の来客を見送った秀一は、三人の女性の感動的な話を、何かの形で残せないかと考えていた。
「小説的にまとめるのはどうだろうか」
秀一の言葉に、同様の気持ちを抱いていた優香は、喜んで賛成してくれた。秀一は、三人の女性に承諾を得てまとめ上げるのであった。