第一章 劇場

インペリアルホテルの最上フロアでは、今回のロンドン訪問の責任者アラブ首長国連邦・アブサイクル首長国・カラム財務副大臣と副大臣の部下二名を囲んで、劇場に一緒したボディガード三人が今日の顛末を報告しようとしていた。

副大臣は顔を真っ青にしながら目を三角にし「一体何が起きたんだ!」と大声を出した。部下の二人はメモ帳を握ったまま黙っていた。

先ず、ステージを背にしてテーブルに向かい座っていた時にハンドガンで胸を撃たれたマサイが話し出した。

「突然、男が鳥のように上から飛んで来ました。我々のテーブルの方へと言うか王子様・王女様の上へ足を大きく広げ頭から……」「男が王子様と王女様の頭を超えようとした時、凄まじい銃声が鳴り響きました」

「私は胸に激しいショックを受けて後ろに倒れ込み、胸のショックが強く動けませんでした」

ヨシムがそれを聞きながら口を開き、「銃声が響く中、男が王女様・王子様の頭を抱えてテーブルに落ち、衝撃でテーブルが崩れ男と共に何もかもが床へこぼれ落ちました。私は目先に男の足が見えた時、崩れたテーブルと一緒に床に倒れ頭を打って一瞬動けませんでした」

「直ぐ立とうしたのですが男の足が私に載っていて、何とか立ち上がると男が王女様と王子様の上に載っているのが見えました。その先にはチーフが右肩から血を流して立ち上がられているのが見え、チーフが男を蹴って転がせた後、王女様を見てチーフも私も驚愕して時間が止まり、頭が真っ白になりました」

「直ぐ、血だらけになった王女様と悲しそうな顔をされた王子様を引き上げて、チーフが出口へ殺到する皆を見ると、チーフと私で抱きかかえるようにその場を逆のステージに向けて走りました」

「マサイが胸を押さえて後に続きましたが、マサイの横にいたサドルは首から血が噴き出て倒れ全く動きませんでした」

「王子様と王女様を襲った男はどうした?」

「男がチーフに蹴られて王女様の横へ転がった時呻いたような気がしましたが、頭から顔そして胸まで流れ出た血で真っ赤でした。死んだかどうかは分かりません!」

カラムは「今から直ぐに王子様達を襲った者達の情報を集めろ! 特に王子様・王女様を襲った男を必ず見つけろ! 必ずだ!!」

カラムは王子と王女が万が一になっていたら大変な事になっていたと寒気がした。と同時に襲った者達とボディガードの油断に腹が立った。

「事件の様子を細かく掴め! あらゆる手段を使って!」