教育の中心である“道徳”を修める内容とは…『幼学綱要』を読む
『幼学綱要』を読む
【第3回】
河野 禎史
日本の未来に危機感を抱き、「孝行」「友愛」「信義」など20の徳目から我が国と志那の偉人にまつわる逸話が記された、明治の子どもたちの学びのための書を現代語訳する
明治 15年(1882 年)、その勅命を受けた元田永孚によって編纂され、宮内省より頒布されたのが『幼学綱要(ようがくこうよう)』です。戦後以降の日本では『幼学綱要』について新たに解説された書籍はほぼ存在しておらず、いまではその存在を知る者も少なくなっています。本書は、そんな日本の未来に危機感を抱いた著者が執筆した『幼學綱要(原文)河野禎史注釈』(2021 年 マーケティング出版)を現代語訳したものです。※本記事は、
河野禎史氏の書籍『「幼学綱要」を読む』(幻冬舎ルネッサンス)より、一部抜粋・編集したものです。
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第一章
1.【幼学綱要頒賜の勅諭】 (明治十五年十二月)
『彝倫道徳は教育の主本。我朝、支那の専ら崇尚する所
欧米各国も亦、修身の学ありと雖、之を本朝に採用する、未た其要を得す。
方今、学科多端、本末を誤る者、鮮からす。年少、就学、最も当に忠孝を本とし、仁義を先にすへし。
因て儒臣に命して、此書を編纂し、羣下に頒賜し、明倫修徳の要、茲に在る事を知らしむ』
意訳
人として守らなければならない、また、変わることのない道徳は教育の中心です。
私たちが住む日本は、古い時代から中国の古典や経典(過去の先生の教えをまとめた本)を大事にしてきました。
欧米の各国にも道徳の教育はありますが、この教育を今の日本で行うのは、その本質が異なってくる点があります。
まさに今は学ぶ学科が多く、色々な方面にわたっており、物事の根本と枝葉の違いを誤って理解している人が多くいます。
幼児期・児童期の最初に必要な学びは、忠と孝が基本であり、仁と義を優先的にする必要があります。
したがって、宮中(皇室)において儒学で仕える専門官に命じて、この書をまとめ、多くの地域にこの本を配って、人の守るべき道や義の心を明らかにして、道徳を修めるために必要な内容がこの本にあることを広く知らせます。