【前回の記事を読む】教育の中心である“道徳”を修める内容とは…『幼学綱要』を読む

第一章

3. 幼学綱要 例言

 この編纂は(よう)(どう)初学(しょがく)のためのものである。よって人として守るべき道、道徳について身近なものを採用して、幼童の最初の智識とし、心の持ち方としての基礎となることが要である。

 本書の中に掲げた経典の語は、その項目の意義として適切な主要なものであり、経典の順序にこだわっていない。

 本文中の所々に図を挿入することで図を見て心に感じて、感動が起きるための助けとしている。

 項目は二十であるが、これは要として十分に尽くしているとは言えない。

これは、あくまでも大きな項目を挙げただけであり、読者等がこれらを推し進めて広げていくことが必要である。

第二章 幼学綱要を読む

【孝行・第一】

この世界において父と母がいない人は一人もいません。初めは必ず母のお(なか)に子が宿り、そして生まれてきます。それから子は成長し成人していきます。その間、恩情(おんじょう)、愛情、教え、養ってくれることが最も深いのは父と母です。

よくその恩を思って自分自身の身を慎み、精一杯、親に尽くさなければなりません。

親に対して愛情を深く持ち、礼儀を厚くして尽くしていくのは、子としてのあたり前の道であって、これを孝行といい、人として守るべき道理の最も重要な道です。

国史(こくし)

日本書紀(にほんしょき)巻第三(まきだいさん)神日本磐余彦天皇(かむやまといわれびこのすめらみこと)神武天皇(じんむてんのう)古事記(こじき)

【1】神武天皇(じんむてんのう)

今から二千六百八十二年前(令和四年現在)のお話です。

初代神武天皇は、元年(がんねん)の春、正月の十七日の(つい)(たち)に奈良県の橿原宮(かしはらみや)において即位して、お妃を迎えて皇后とします。

そして祭祀(さいし)を行う場所を作り、八柱(はちはしら)の神様をお祭りになってから日本の平安を守っています。

その時、(あまの)(とみの)(みこと)は多くの神職(しんしょく)を連れて、(てん)()から伝わった三種の神器(じんぎ)を神殿に捧げて安置しました。

(あまの)種子(たねこの)(みこと)天神(あまつかみ)のお祈りを述べて、可美(うまし)真手(までの)(みこと)は陛下をお守りする兵隊を引き連れ、その兵隊は矛や盾を持って礼儀正しく綺麗に並んでいます。

(みちの)(おみの)(みこと)は兵隊を引き連れて宮殿の門をお守りしていました。

陛下は、お仕えする多くの臣下たちから正月の挨拶を受けて、天種子命と天富命に対して命じて、お祭りを行う役目を与えて、朝廷の仕事を担当させました。

四年の春、二月二十一日。陛下は(みことのり)していいます。

「私の祖先の霊が天から見下ろして私の体を照らして助けてくれた。今は多くの地域を平定(へいてい)して国内が平和になった。よって神様をお祭りする場所を作り、お祭りすることで、ご先祖に対して大きな孝行を行いたい」

それから、お祭りする場所を奈良県の()()(やま)に作り、皇室の祖先となる神々をお祭りしました。