凛も大きく頷いた。泣きそうな顔をこらえていた娘の頭を撫でながら、仲山は表情を和らげる。

「凛、見てみろ、これがそうだ」

「うっわああ、おっきい。もう乗れるの? でも凄く並んでるよ」

二人が辿り着いたのはドリームアイ。日本最大級の巨大展望型観覧車だ。

「じゃーん。お父さんはチケットをインターネットで予約したからすぐ乗れるぞ。お母さんが申し込みチケットを用意してくれて、お父さんが予約したんだ」

「ふーん」

そう頷きながらも、凛の視線はドリームアイから逸れていく。

「おい、凛、お父さんを疎外にしないでくれ」

「そがい? あのね。凛、あそこのメリーゴーランドに乗りたい!」

「こらこら、凛、それは予定と違うからダメだ。これはファストパスというもので時間が決められてるんだ。メリーゴーランドはあとでも乗れるだろう」

「何それ、また計画?」

そう言うと凛はふてくされた。仲山は困りつつも機嫌を取る。ドリームアイは一番人気のアトラクションで、しかも回転率が悪い。予約チケットがなかったら並んでいても乗れなかったりする。今すぐ入り口に行かないと、予約時間が過ぎてしまうのだ。

とにかく予定を守りたい。仲山のこの性分は、ある意味有名だった。妻の惟子も呆れていたし、かつての同期や後輩、上司に至るまで、その性格を知っていた。