⑸「『幼学綱要』を読む」・(読本)の出版にあたって
『幼學綱要』の原文の内容については、出版の時期、解説本によって異なりますが、・幼学綱要頒賜の勅諭・幼学綱要 序・幼学綱要 例言・目次・20の徳目ごとに徳目の意味について漢文日本の物語中国の物語(挿絵62画・62の物語についてのみ)という構成になっています。この「『幼学綱要』を読む」・(読本)は、漢文と挿絵62画については省略しています。
内容についても『幼学綱要』の表記をそのまま使用していますが、元の原文ではなく、読みやすくするために現代仮名遣いによって修正しています。さらに、今は使わなくなった熟語や漢文について読み下し、漢字について、旧字体を新字体に変更するなどを加えて編集しています。
また、『幼学綱要』の原文には各物語の出典についての記載はありません。しかし、この「『幼学綱要』を読む」・(読本)では、読者の方にその物語の元となった書物、物語などについても興味を持ってもらうように、私個人が調べて確認できた物語についてのみ出典を記載しています。
言葉遣いや用語の表記について、この『幼学綱要』は明治の初期に書かれた書物であるので、現代では不快や差別とされる表現が含まれることもあるかと思います。
しかし、今の時代に『幼学綱要』をあえて世に出したのは、差別などを助長する目的ではなく、あくまでも、当時の日本人の歴史観、道徳感などを知ってもらい『幼学綱要』の全体の趣旨を伝えることを前提としておりますので、特に修正はしていません。物語の内容を伝える際、全ての原文について現代語訳という形によって変更しています。
原文について数冊の解説本などを使って、より原文の内容を忠実に反映できるように構成しましたが、歴史、道徳感など解説者のものの見方によっては多少異なってくる箇所があります。私個人のものの見方も加わっている点がある箇所も当然あります。そこで、読者の皆様が原文に近い内容に触れることができるように出典を加えています。
20の徳目である道徳観を最初から押し付ける考えもありません。各物語を通して読者の皆様に自由に感じてもらいたいと思っています。そんな中、少しでも読者の皆様の人生において考える機会になれば幸いです。歴史的事実についても、明治初期の頃の認識なので現代と多少の食い違いが生じている点もあります。
しかし、『幼学綱要』の原文に沿った内容をそのまま残しています。『幼学綱要」の内容は20の徳目を歴史の物語を通してどう理解するかが趣旨であり、多少歴史的事実とは異なる点があることをご理解ください。
過去の歴史の事実は変わりません。しかし、現代に生きる人々が過去の歴史を今の自分たちが生きるためにどのように意味づけをするかが重要だと思っています。そのように『幼学綱要』を捉えることができれば、日本人が大切にした20の徳目を歴史の事実を通してどのように後世に伝えるのかが重要な点であり、歴史の事実が真実であるのかは重要な点ではありません。
以上のような観点で『幼学綱要』の歴史の物語に触れてください。