「山田さん、バスの方は大丈夫でしたか」
「はい、忘れ物はありませんでした。まあ、初日ですから皆さん気をつけているのだと思います」
全員がほぼカギを受け取ったのを確認し、真知子は移動の案内を始めた。
「皆さん、のちほどボーイさんがスーツケースを部屋に持って行きますから、自分のスーツケースに部屋番号を書いたタグが付いているかを確認して、手荷物だけ持って部屋に行ってください。なお、夕食は六時からですので、少し前に二階のレストラン入口にお集まりください。ルームキーを見せれば席に案内してくれます。」
学生たちはタグを確認したあと、エレベーターでそれぞれの部屋に向かった。真知子はロビーのコンシェルジュにスーツケースを運ぶように頼んでから、二階のレストランに打ち合わせに行った。支店長は、ボーイがスーツケースをすべて運び終わるまでそのままロビーに残っている。
「こんにちは。Fツーリストです。今日の夕食と明日の朝食の予約確認に伺いました」
「いらっしゃいませ。はい伺っております。夕食は窓際にお席を準備しています。また、明日の朝食はバイキングになっております。いずれもお客様のルームキーを見せていただければお席にご案内いたします」
「ありがとうございます。ではのちほど伺います」
真知子がロビーに戻ると、支店長が待っていた。
「ご苦労さん、レストランの確認ありがとう」
「明日の朝食はバイキングだそうですよ」
「だいたい朝食はバイキングになると思いますね。アメリカの食事は量が多いので、バイキングだと調整できるので助かります。じゃあ、部屋に行って荷物を入れますかね」
と言いながら、支店長はカギを渡してくれた。部屋は五階だ。支店長は七階らしい。部屋に着くと、すでにスーツケースが部屋の前に置かれていた。前まで運んでくれるから楽である。鍵を開けて部屋に入る。添乗員は、通常一人でもツインルームを準備してもらえるのでゆったりとできるのがよい。部屋の内装は特に豪華ではないが、ベッド、デスク、テレビ、冷蔵庫と一通りのものはそろっている。