【前回の記事を読む】【論文コンテスト大賞作】なくてはならない「手話通訳者」は社会的評価が低く、待遇が悪い!? 暗い現状に一石を投じる!

2.本論

2-1 手話通訳の歴史

写真を拡大 [図表1]手話通訳の歴史

2-2 設置通訳者

日本手話通訳士協会(2004)(注1)は、「設置通訳者」について、以下のように述べている。

自治体や派遣機関などで、手話通訳をおもな仕事として働く手話通訳者を「設置通訳者」という。設置通訳者が勤務しているおもな職場としては、都道府県庁、市町村役場、社会福祉事務所、社会福祉協議会、障害者福祉施設、聴覚障害者団体などがある。

自治体で働く手話通訳者の場合、窓口での通訳や相談はもちろんのこと、手話講習会の講師や開催準備など関連業務、聴覚障害者に対する行政サービスの広報、関係機関との連絡調整、福祉施策の企画・立案、地域への啓発など、さまざまな役割を担うことになる。

聴覚障害者情報提供施設は、字幕・手話つきビデオ等の製作や聴覚障害者への相談業務、手話通訳者等の派遣のコーディネート、手話講習会への講師派遣といった業務を行う法定施設である。

職能訓練、各種講座の実施など法定外の独自の事業も含めた、聴覚障害者福祉に関係するさまざまな業務を行う。覚障害者とともに、新しいサービスの開拓などにも携わっている。

自治体などの職場では、同じ職場で働く手話通訳者がいないため、長時間勤務、休日も仕事といった状態になりやすく、精神的な負担も重くなりがちである。

複数設置は増加しつつあるが、非正職員としての増員など、身分の不安定化が指摘されている。手話通訳業務の専門性に対する社会的認知を高め、専門職にふさわしい雇用条件や身分保障を求めていくことが、大きな課題となっている。


(注1)日本手話通訳士協会(2004)『まるごとガイドシリーズ⑲ 手話通訳士まるごとガイド』株式会社ミネルヴァ書房