2.本論
2-6 登録手話通訳者の声
以下は、山形(注1)(2010)が、登録手話通訳者が日々どのようなことを感じながら活動しているのか、『登録されている手話通訳者の健康と労働についての抽出調査報告書(2007年10月調査)』より一部抜粋したものである。
<健康問題>
・腕が痛いことがある。仕事の休みに手話通訳をするため、休みがなくなることが多い。
・肉体的よりも精神的なストレスを感じる。
・頼まれたら時間が許す限り引き受けてしまうので、その結果疲れることがある。
・寝ている時に手足がしびれる。常に首に痛みがある。
・昼間は仕事をしているが、夜に通訳が入ると、通訳をしている時に肩こりがひどくなり辛い。
<通訳体制>
・平日の通訳に対応する人が少なく、夜勤明けや夜勤に入る前の時間に通訳が入り、時間調整も含めてやや負担がある。
・地域の手話通訳者の中で活動できる人が限られているため、自分の力量以上の依頼を受けてしまうことがある。
・子育て中なので、家庭での役割と通訳活動のバランスが難しい。
・同居の義母も高齢、実家の母も高齢で、どちらかが体調不良のとき、仕事や活動に影響してくる。
・活動が不規則な時間になりがちなことに対し、家族が不満を感じているらしい。
・手話通訳活動、パートの仕事、家庭とどれも不完全な状態のような気がして、それがストレスになっている。
<身分保障>
・手話通訳は研修、学習と時間と精力を使うが、仕事としていくには足りないので、結果、他の仕事をせざるを得ない。
・自分のやっていることに自信が持てない。いくらやっても普通のパート以下の収入では家族に強く言えない。
・仕事として成立せず、他の仕事で生活しながら活動している人が多いと思う。小さな市町村では、設置通訳者の条件もとても悪い。
・聴覚障害者からは高い専門性を求められる。しかし通訳料は生活できるレベルではない。仕事を持ちながらの通訳活動、または主婦で家庭の仕事の間にやっている通訳活動ではもう限界である。
・ボランティアだけで終わるのではなく、きちんと職業として生活できるようにしてほしい。
注1:山形惠治(2010)「登録手話通訳者の周辺を考える」『手話通訳問題研究』No.113,34-40.