2+1は……
~命の灯火~
凛は毎日、まひるを支え、ヒカリの身体の異変に気を配っていた。勿論、まひるもだった。しかし時々起きるヒカリの症状が完治する事を凛は心から願っていた。
ある日、凛は指先が薄れていく事に気がついた。ヒカリを強く案ずると、薄れていく。
凛には、ある異変がヒカリを助ける事が出来るのでは、と感じ始めていた。まひるには気づかれない様に気を配った。
ヒカリの症状が出るたび、凜がヒカリを案ずる事で、凛の指先から手のひらまで薄れていく。その度にヒカリの症状は良くなっていくのが分かった。まひるには分からない様に支え続け、ヒカリの症状が良くなる事を願っていた。
ある日ヒカリが下校途中、車が往き来する道で症状が出て、救急車でまひるの病院に運ばれてきた。
まひるは、青ざめて病室でヒカリに付きっ切りだった。凛も同じく付き添っていた。まひると凛は原因不明の病からヒカリを守る事に気持ちを注いできたが、今回だけは違った。1週間経ってもヒカリの意識は戻らない。凛は、出来るだけの事はしてあげようと心に決めていた。
それは、ヒカリを助ける度に凛の身体が透き通っていくからだ。
凛は、まひるを病院の屋上に呼び出した。凛は、まひるに自分が居なくなった時の事を話し始めた。ヒカリには知らせない事や、これから起こる事などを話した。
まひるは、信じられないという顔で泣きながら顔を横に振るだけだった。
愛する凛が居なくなる事は、まひるには耐えられない事だった。医者として、ヒカリの病気を治せない虚しさと、凛を失う事の絶望感だけしかまひるには無かった。
そして、1週間が経った夕方ヒカリは危篤状態に陥った。
慌てるまひるは、なすすべもなく、ただ涙ぐむだけでヒカリの手を握りしめていた。凛の姿はすでにそこには居なかった事にも、まひるは気がついていなかった。
病院の屋上で凛はヒカリの事と、まひるの事を考えて、ある決断をした。
空が夕焼けに染まる頃、ヒカリは意識を取り戻した。まひるは嬉しさのあまり涙が止まらなかった。ヒカリは何が起きたのか分からない様子でまひるの顔を覗き込んだ。
ヒカリは奇跡的に回復していったが、其処には凛の姿は無かった。ヒカリは凛を思い出す度涙ぐむ事もあった。まひるに聞いても何も答えてはくれなかった。
しかし、まひるには分かっていた。凛がヒカリを助けてくれた事、あの日の夕焼け空の色は、まひるは忘れられずに過ごしていた。
凛が居なくなったあの日から3年が経ったクリスマス。まひるとヒカリは3年前から、お互いあえて凛の話題には触れずにいた。ホテルで外食を済ませて家に着いた時だった、窓から光が溢れていた。
不思議に思いながら2人は玄関から部屋の中に入った。テーブルの上には可憐な花が飾られ、クリスマスケーキが置かれていた。
2人は顔を見合わせていた時、2人の後ろから人影が現れた。
2人は溢れる涙をこらえきれずに抱きついた。3年前に居なくなった凛がそこに立っていた。