2+1は……

~僕のそばに~

まひるが仕事を終えて仕事場を出ると、真一の車が止まっていた。まひるは、無視をして歩き始めたが真一が追いかけてきた。ゆっくり、話がしたいとまひるに懇願してきた。まひるは迷ったが、ヒカリの父親だ。断れず話を聞くことにした。車でしばらく走って人気の無い河岸に車を停めて真一が話し始めた。

「全て自分が悪かった。まひるの苦労を考えると計り知れない。もう一度やり直してくれないか」

真一は真面目にまひるに話し始めた。まひるにはやり直すつもりは一切無かったので断ったが、真一も聞いてはくれない。まひるの知らない間に、ヒカリの下校様子を見ている内に父親らしい感情が湧いてきた事も、まひるに話した。頼むからもう一度やり直す機会を与えて欲しいと真一は懇願したが、まひるにはその気が全くなく断った。

話は堂々巡りのまま進んでいった。まひるに拒まれるほど、真一の気持ちは抑えられなくなってきた。まひるの肩を掴み懇願する真一を、まひるは許せなかった。

「乱暴な事は止めて」と言ったが真一は止められなかった。「もう止めて!」とまひるが拒んでも、乱暴に迫ってくる真一の手を振り払う力はまひるには無かった。つい心の中で、まひるは凛に助けを叫んでいた。車の窓ガラスを叩く音がして、真一は一度冷静になった。まひるが振り向くと、そこには凛の姿があった。真一が車から降りた途端に、凛は真一を殴りつけた。

「こんなやり方して恥ずかしくないのか」

と、問い詰めた。まひるは車から降りて凛の後ろに隠れた。凛は真一に、

「過ぎ去った時間は取り返せない。自分でも分かっているだろう」

と話した。真一はうなだれて、放心状態だった。凛はこれ以上この親子に近づかないで欲しい、と話して、まひるの手を引き歩き始めた。まひるは、震える身体を必死に抑えようとしていた。それに気づいていた凛は優しくまひるの肩を抱き寄せ歩いた。

「多分、二度とこんな事は無いと思うから大丈夫。これからは、僕が居るから安心して。これからは、ずっと僕のそばにいて欲しい。僕じゃだめか?」

と、凛は優しくまひるに言って抱きしめた。まひるは、安堵と凛に対する気持ちに改めて気がついて全てを凛にあたえた。