~消えゆく命~
まひるの病院に救急車が入ってきた。いつもの事、とまひるは搬入口に向かった。患者は小学生女子、意識が無い、との情報が入っていた。まひるは救急車から降りてきた患者を見て青ざめた。ぐったりとした患者は、ヒカリだった。まひるは、頭の中が真っ白になった。慌ただしく動き回るスタッフの中で、まひるだけが凍り付いていた。
病室にはベッドに寝ているヒカリとまひる。そしてまひるに寄り添う凛の姿があった。担当医から呼び出されたまひるは、部屋を出て担当医から話を聞いた。色々検査をした結果、ヒカリの症状は、原因不明との事だった。ただ分かっている事は、今の症状を治す方法が見当たらないとの見解だった。気がつくとまひるの隣に居た凛の姿が消えていた。
ひとまずまひるは入院の用意をしに自宅に戻った。それから1週間凛の姿が見えなくなっていた。その1週間、ヒカリは一人心細く暗闇の中に居た。するとどこからか凛の声が聞こえてきた。ヒカリは凛に怯えた声で話しかけた。
「凛どこにいるの? 怖いよ」
切ないヒカリの問いかけに凛が優しく答えた。
「大丈夫だよ。僕は君の側にずっと居るよ。怖がらなくても大丈夫。君は少しの間眠っているだけだから。僕がずっと君に話しかけるから。少しの間僕と君とで話をしよう」
と、ヒカリに話しかけていた。ヒカリが意識を失い1週間が過ぎたある日、凛がまひるの元に現れた。まひるは目に涙を溜めて凛に走り寄っていった。凛は優しくまひるを抱きしめ、
「大丈夫。ヒカリは意識を戻すよ」
と言った。すると看護師がまひる達に走ってきて、
「娘さん意識が戻りましたよ」
と教えてくれた。まひると凛は直ぐにヒカリの元へ向かった。それから3日後3人は家に帰った。ヒカリは凛に「有難う」と言った。夢の中に凛がいたので怖くなかったよ、と話していた。まひるはその話を聞きながら不思議な気持ちになっていた。いつもの夕食時まひるは、ヒカリを気にしながらも平然を装っていた。そんなまひるを見ている凛は、ふざけてヒカリを笑わせている。
凛と、ヒカリがピアノを弾いて歌っている。そんな2人をまひるは、不安を隠して洗い物をしていた。夜遅くにまひるは、寝付けず庭に座り込み佇んでいた。そんな時凛が静かにまひるの側に見守って立っていた。まひるは、凛に支えられ庭の椅子に座るのが唯一の支えだった。いつまで、こんな日が続くのか、泣きながら凛に抱きしめられていた。
ヒカリの命の灯火がいつまで続くのか、まひると凛は願う毎日だった。