俺は初めて彼女の恐怖に怯え泣く姿を見た。

ルナ姉……。

「そんな顔すんな、ルナ姉には似合わない。安心しろ、俺がどうにかしてやる!」

そんな言葉をかけたかった。

「……」

でも、出来なかった。

俺は怯える表情を見て、同じように恐怖するしかなかった。

俺には何も出来ない。

普段ならいつも支えてくれたのは彼女の方だった。

学校で嫌なことや難解な悩みがあっても、いつもそれを笑い飛ばしてくれた。それに何より一緒にいると安心出来た。それが今では全く逆の立場となり、それでも安心させられない自分に失望する。不謹慎かもしれないが、普段の何気ない振る舞いに本当に感心させられる。

「(……何が『何も出来なくとも』だよ! これが、この結果じゃねえか!!)」

先程の夜道を全力疾走する時とは打って変わって、俺は弱気になっていた。

悔しかった。こんな状況でも、俺はルナ姉の力になれない。

泣いた。

怖かった。

足が震えた。

脳神経が麻痺して意識を失いそうだった。

とても自分の体を制御出来そうになかった。

今すぐ彼女と俺しかいない異空間にでも行きたくなった。

全てをとっぱらって、ここから二人で逃げ出したかった。

もう何を言っているのかよく分からないけど、俺ももうそこまで頭がやられてしまったようだ。訳が分からない。